メディア・リテラシーについて調べようと思い、国会図書館のOPACで「メディア・リテラシー」というキーワードを入れてタイトル検索してみたところ、なんと50冊もの文献がヒットしました。よほど、研究テーマとして普及してきたのだなあ、と改めて感じました。

 この分野の代表的研究者だった鈴木みどりさんによれば、メディア・リテラシーとは、「市民がメディアを社会的文脈でクリティカルに分析し、評価し、メディアにアクセスし、多様な形態でコミュニケーションを創り出す力」のことをいいます(鈴木みどり編『メディア・リテラシーを学ぶ人のために』世界思想社 1997)。

 この定義では、メディア・リテラシーの主体は、もっぱらオーディエンス(受け手)であるように思われますが、さきほどの検索では、「送り手のメディア・リテラシー」という、より広い意味でも使われるようになっているようです。

 具体的な事例をいくつか調べてみましたので、備忘録的に少し書き留めておきたいと思います。

■1989年 朝日新聞「サンゴ礁捏造記事」問題
■1992年 NHKドキュメンタリー「やらせ」捏造問題
■1999年 テレビ朝日「所沢ダイオキシン」誤報問題
■2007年 関西テレビ「あるある大事典Ⅱ」捏造問題

1989年朝日新聞「サンゴ礁」捏造問題について

 朝日新聞は、1989年4月20日(木)夕刊第1面「写'89地球は何色?」の環境シリーズ企画記事において、K・Yのイニシャルで傷つけられた、西表島沖のアザミサンゴの写真を掲載し、これに基づき、自然保護を訴える記事を載せましたが、その後の調査で、この傷は朝日のカメラマン自らがつけたものとわかり、5月20日付け、朝刊1面および3面で正式に謝罪しました。
 
  朝日新聞サンゴ礁捏造記事で謝罪報道(5月20日)600pixel
      1989年5月20日『朝日新聞』朝刊3面より

 自然保護を訴える、環境キャンペーン記事で、送り手自らが自然破壊をしていたということで、大きな反響と非難をあびる結果となりました。

 私も、当時この記事を見て、大きなショックを受けたことを覚えています。その後、朝日新聞は、どのような環境報道を行ってきたでしょうか?専門的な「環境ジャーナリスト」を養成するという努力を払ってきたでしょうか?

 この事件直後、マスメディアはいっせいに朝日の報道を取り上げ、多数の報道陣が、現地沖縄のサンゴ礁に殺到し、逆に周辺のサンゴ礁を荒らすという、「メディア・スクラム」(被災現場への取材殺到のこと)を演じました。これもまた、強く批判されなければならないと思います。

 オーディエンスのメディア・リテラシーというより、送り手のメディア・リテラシーが問われた事件といえるでしょう。

参考文献・資料:
朝日新聞 1989年4月20日夕刊1面、5月16日朝刊、5月20日朝刊
中村庸夫(なかむらつねお)『サンゴ礁の秘密』祥伝社ノンポシェット 1995年, pp.57-65