ネオ・デジタルネイティブの誕生―日本独自の進化を遂げるネット世代ネオ・デジタルネイティブの誕生―日本独自の進化を遂げるネット世代
著者:橋元 良明
ダイヤモンド社(2010-03-19)

 本書は、東大橋元研究室と電通総研の産学協同研究の成果をまとめたものです。「デス、マス」調のわかりやすい文章で、膨大な調査データをもとに、76世代、86世代、96世代のメディア環境、情報行動の変化を探求しています。研究者にもビジネスパーソンにも有益な一冊といえるでしょう。詳細は直接お読みいただくとして、ここでは、そのエッセンスをご紹介したいと思います。

【76世代】デジタルネイティブ第一世代(?)
 1976年前後に生まれた世代。現在34歳前後の働き盛りです。就職氷河期を生きてきた人たち。20歳前後にPCとケータイに出会い、PC利用がとくに活発な層。名だたるIT起業家がこれに含まれる。
【86世代】デジタルネイティブ第二世代(?)
 1986年前後に生まれた世代。現在24歳前後。大学生~新卒世代。ケータイをメインに使いこなす。
【96世代】ネオ・デジタルネイティブ世代
 1996年前後に生まれた世代。現在14歳前後。中学生がメイン。モバイル志向が先鋭化。動画デバイスを始終持ち歩き、使い倒す、ビジュアル系が多い。

 76世代と86世代に間には、メディア利用、価値観、対人関係などに大きな落差がある、と指摘しています。

 PC対ケータイ利用でいえば、76世代は、PCで「書き」、ケータイで「読む」のに対し、86世代はケータイで「書き」、PCで「読む」といった違いがあります。76世代は、テレビとPCを同時並行的に見るのに対し、86世代は、テレビを見ながらケータイをいじっている。

 価値観については、76世代が自分らしさを大切にするのに対し、86世代は人との調和を重んじる。

 対人関係でいうと、76世代は「PCで世界とつながる」と感じるのに対し、86世代は「ケータイ」でつながるという感覚をもっている。

 私自身はといえば、76世代以前に属しますが、メディア利用パターンなど、76世代に近い感じです。「ネオ・デジタルネイティブ」になると、私の世代とはまったく違う別世界の住人のような気がしています。モバイル動画を時間、場所を超えて使いこなす「ユビキタス映像処理脳」(105ページ)はその典型でしょう。ちょっと難しい言葉遣いになっていますが、96世代とそれ以前の世代の違いは、次のように要約されています。

「デジタルネイティブ」と「ネオ・デジタルネイティブ」の違いは、前者が、主にPCを通してネットを自在に駆使する世代であるのに対し、後者は、映像処理優先脳を持ち、視覚記号をパラレルに処理するのに長け、モバイルを駆使してユビキタスに情報をやりとりし、情報の大海にストックされた「衆合知」を効率的に利用し、これまでの、言語中心にリニアなモードで構成されてきた世界観を変えていく若者です(140ページ)。


 最後の第4章では、「ネオ・デジタルネイティブとうまくつきあう」というタイトルで、ここは96世代の両親やマーケティング実務家などに有益なアドバイスがいろいろと提案されています(紹介は省略)。

 ネオ・デジタルネイティブが大人になった頃には、世の中どうなってしまうのか、想像もつきません。いろいろと勉強になりました。