「知識共有コミュニティ」(Q&A型)の威力がどの程度なのか、果たして信頼ある回答が得られるのか?それを評価するために、代表的なサイトで実験してみました。

 知りたい言葉の意味は、「サライ」です。先日、Yahoo!知恵袋で『小さい宿』という意味だと知りましたが、それだけでは、「知識」とはいえません。

 代表的なQ&A型の知識共有コミュニティには、「Yahoo!知恵袋」「教えて!Goo」「人力検索はてな」などがあります。この3つで、とりあえず「サライ」という言葉を検索にかけてみました。

Yahoo!知恵袋

 全部で10個の関連質問が出てきました。それぞれに、回答が載っています。

「サライ」ってなんですか? 24時間テレビで必ず歌われるサライってなんですか...

ベストアンサーは、次の通りです。

サライとはペルシャ語で「小さな宿」です。

作詞:谷村新司
作曲:弾 厚作(作曲者の弾厚作さんは、加山雄三さんの音楽家としてのペンネームです。)

今から15年前に24時間テレビの番組放送中に製作されたテーマソングです。
実はこのサライという曲は一般の方から詩を募集してそれをつなぎあわせ、歌詞を完成させて、
それにメロディをつけて成り立っているものなのです。
その当時、曲作りに携わったのが谷村氏、加山氏でした。

 これで最小限の知識は得られました。回答日時は2007年ですから、「サライ」は、1992年に、24時間テレビの番組放送中、一般からの詩を募って、それをつなぎあわせた曲の名前ということがわかります。語源は、ペルシャ語で「小さな宿」。

 それから1年後の同じような質問:
サライってどういう意味ですか?サライの空って何ですか?

これに対するベストアンサーは、

ペルシャ語でサライが「オアシス」の意味だというウソが流布していますが、ペルシャ語の sara'i に「オアシス」の意味も「故郷」の意味もありません。ペルシャ語でオアシスは vahe ワーヘ といいます。

とくにWikipedia日本語版はひどく、sarai を salai と、RとLを間違って書いています。

ペルシャ語の sara'i サラーイ は「家、旅館、役所」の意味で、比喩的に「世間、世界」の意味にもなります。
基本形は sara サラー で、イ はペルシャ語の不定語尾。

ペルシャ語 sara'i は、トルコ語を初めとするチュルク系(トルコ系)諸言語に入って、ウイグル語やウズベク語やカザフ語で sarai は「宮殿」の意味になりました。ヒンディー語やウルドゥー語などインド系諸言語にも入って、意味は「宮殿、館、家」です。
 これで、「サライ」の語源がさらに詳しく説明されています。「オアシス」という流布されている意味は間違い、ウィキペディア日本語版はsaraiをsalaiと間違えている、sara'iは「家、旅館、役所」の意味、ウィグル語などでは「宮殿」の意味になる、といった知識が披露されています。

教えてgoo

 『サライ』ってどういう意味?  

今更なのですが・・・
24時間テレビの主題歌、『サライ』って、どう言う意味なんでしょうか??


という設問に対する回答は、
『サライ』とは、ペルシャ語で『宿』、歌の中では『ふるさと』、『心のオアシス』といった意味が込められているとの事です…。

といった程度です。明らかに、Yahoo!知恵袋の方が詳しいようです。

人力検索はてな
 こちらで、「サライ」を入力して検索してみると、1件もヒットしませんでした。これでは、役に立ちませんね。

 Q&A型知識共有コミュニティのNo.1は、Yahoo!知恵袋といえるでしょう。

 しかし、Yahoo!知恵袋の答えで、ウィキペディアのSalaiの綴りが間違っている、といった「ウソ」情報は、本当なのでしょうか?

ウィキペディア
ウィキペディア日本語版で『サライ』を検索してみると、かなりの量の解説文が載っていました。綴りに関しては、
  • サラー(ペルシア語: سراUNGEGN式: Srā)、サラーイ(ペルシア語: سرای‎ Srāy; Srāi) - ペルシア語で家(または宿)の意味。家というペルシア語は、さらに「خانه」(ハーネ Khānh; Hāne)という言葉も出始めている。「خانهٔ کعبه」(ハーネイェ・カアバ Hāneye Kaabah)は、カアバ神殿
  • となっており、Salaiという綴りはない、というかたぶんYahoo!知恵袋を受けて修正されているようです(2010年12月20日閲覧)。Salai はレオナルド・ダヴィンチの弟子の通称だとしています。

     楽曲の「サライ」については、ウィキペディアでは、さらに詳細な解説が載っています(目次付き)。ここに抄録しておきます。
    楽曲誕生の経緯
    1992年の第15回記念として、加山雄三(筆名である弾厚作名義)がギターで作曲し、全国の視聴者から寄せられた愛のメッセージを基に谷村新司が代表作詞としてとりまとめ、24時間以内にそれを一本の歌として制作しようという試みが行われた。
    テーマ
    日本テレビによると、曲のテーマは「心のふるさと」であり、「サライ」という曲名はペルシア語سرای」(サラーイ、UNGEGN式: Srāy; Srāi)から来ていて、直訳は「宿(または家)」。さらに日本テレビによると、この曲には「砂漠の中のオアシス[A 1]という意味も込められている。「宿(または家)」や「砂漠の中のオアシス」が、曲のテーマ「心のふるさと」に近いから『サライ』という曲名になったのである、と日本テレビは説明している。
     「心のふるさと」「砂漠の中のオアシス」という意味が、この歌に込められている、という解釈は、24時間テレビ制作にあたった日本テレビによるもののようです。

    NTVのHPで、「サライ」を検索してみると、2008年8月29日の「気になるコトバ」でサライが次のように説明されていることがわかりました。

    あすから始まる24時間テレビ。
    番組で、
      必ず歌われるのがサライです。

    この曲名、
    実はペルシャ語で
    直訳すると
      「宿」という意味なのですが、
    砂漠の中の
       オアシスという意味もあり、
    「心のふるさと」という
       曲のテーマに近いことから
      こう名付けられた
    ということです。


    どうやら、NTVの勘違いがもとになっているようです。まあ、誤訳にしても、この歌のテーマが「心のふるさと」「オアシス」ということが確認できて、よかったです。

    いずれにしても、コトバの正確な意味を調べる場合には、複数のサイトに当たって検証する必要があるようです。最終的には、図書館などで、もっとも信頼できる情報源(語学事典など)にあたることが必要だということですね!