これについては、すでに別の記事で指摘したが、もう一度繰り返しておきたい。

 ウィキペディアには、「デジタルネイティブ」の項目がある。この中で、「ガートナーのPeter Sondergaardが名付けた名称」(2011年11月1日閲覧時点)と記述されているが、これは間違っていると思われる。前掲書( The Digital Divide)の中でMarc Prenskyの雑誌論文が転載されており、Prensky氏が2001年に雑誌On the Horizon で、初めて「デジタルネイティブ」という言葉を使ったというのが正しいようだ。ウィキペディアのこの項目は、まだ「書きかけ」の状態にあり、いずれだれかが修正することを期待したい。ちなみに、英語版Wikipediaでは、語源について、Marc Prensky氏が2001年に初めて唱えた、と正しく記述されている。ウィキペディアの場合、日本語版は英語版に比べて正確度が劣る面があることを示す一例といえるかもしれない。

 正確にいうと、On the Horizonという教育関係の雑誌のVol.9 Isssue 5, issue6(2001年10月~12月)で2回にわたって掲載された、"Digital Natives, Digital Immigrants" という論文が、「デジタルネイティブ」という言葉の初出記事となる。次の文章が初出の箇所である:

   What should we call these "new" students of today? Some refer to them as the N- [for digital] - gen. But the most useful designation I have found for them is Digital Natives. Our students today are all "native speakers" of the digital language of computers, video games and the Internet.

〔訳〕このような今日の「新しい」学生たちをどう呼ぶべきなのだろうか?ある人は彼らを「N世代」と呼んでいる。しかし、私が見つけたもっとも有用な呼称は、「デジタルネイティブ」だ。今日の学生たちはすべて、コンピュータ、ビデオゲーム、インターネットのデジタル言語の「ネイティブスピーカー」なのだ。

 もう一つ、デジタルネイティブと対になって使われる「デジタルイミグラント」も、同じプレンスキー氏の造語だ。
 上記のパラグラフに続いて、次のように、定義している。

   So what does that make the rest of us ? Those of us who were not born into the digital world but have, at some later point in our lives, become fascinated by and adopted many of most aspects of the new technology are, and always will be compared to them, Digital immigrants.

〔訳〕それでは、その他のわれわれはなんと呼ぶべきか?デジタル世界に生まれてはこなかったが、われわれの人生のある時点で新しいテクノロジーの大部分に魅せられ、それらを採用するようになり、つねにデジタルネイティブと比較されるだろう人々、それは「デジタルイミグラント」である。

※なお、NHK「デジタルネイティブ取材班」編『デジタルネイティブ』(NHK出版, 2009)には、「デジタルネイティブという言葉を最初に使ったのは、アメリカの作家、マーク・プレンスキーだといわれている」と、正しく紹介されている。もっとも、上記の引用原文では、The most useful designation I have found for them is Didital Natives となっており、found ということばからすると、プレンスキー氏のオリジナルな造語かどうかは、必ずしもはっきりとはしない。すでに、一部の人々がこのことばを使っていたのを「見つけた」ということなのかもしれない。