Environment, Media and Communication (Routledge Introductions to Environment)
Environment, Media and Communication (Routledge Introductions to Environment)
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 今日は、次の本をとりあげ、内容を紹介することにしたい。1年ほど前に入手したのだが、まだ全部読み切っていないので、読み進めながら、その要点をこのブログで公開しようと考えたのである。

Anders Hansen, 2010, Environment, Media and Communication. Routledge.
(レビュー)



まずは、目次から

第1章 序説 
第2章 コミュニケーションと環境問題の構築
第3章 環境問題に関するクレイム申し立て
第4章 ニュースとしての環境問題:新しい価値、ニューメディア、ジャーナリストの活動
第5章 ポピュラー文化
第6章 「自然」の売り込み:広告、自然、国家のアイデンティティ、ノスタルジア、環境のイメージ
第7章 メディア、公衆、政治と環境問題

次に、第1章でまとめられている各章の概要を訳出しておきたい。

第2章 コミュニケーションと環境問題の構築

 ここでは、環境問題に関してメディアやコミュニケーションが果たしている役割を理解し、分析するための概括的な枠組みを概説している。環境は「それ自体が語る」というものではなく、環境問題というのはクレイム申し立てやコミュニケーションを通じて初めて、公衆の関心や政策決定の対象たる問題や争点になる、という考え方を導入する。本章では、社会構築主義的なアプローチを環境問題やニュースやその他のメディアの社会学に適用する。そこでは、メディアの役割を理解する上で、メディア報道のバイアスや客観性に対する伝統的な関心よりも、競合的な定義に焦点を当てた構築主義的なアプローチの方が生産的であることを論じている。そして、このアプローチでキーとなるいくつかの分析ツールを指摘する。具体的には、クレイム申し立て者に焦点を当てること、ディスコースへの注目、争点キャリア、争点の共鳴、争点の所有と競争、などが含まれている。社会問題としての環境の構築は本質的にレトリカルな行為であるので、本章ではコミュニケーション分析においてレトリカルなイディオム、モチーフ、クレイム申し立てのスタイル、フレーム、環境をめぐる公共的なディスコースにおける公衆のアリーナの中心的な重要性が指摘されている。

第3章 環境に関するクレイム申し立てとニュースの管理

 この章では、構築主義的な視点をニュースに適用し、環境ニュースには「自然」なものはほとんどないことを示す。「自然災害のニュース」でさえ、積極的に構築されたものという視点でもっともよく理解できることを示す。本章では、環境問題の議論や論争において、主要なステークホルダーたちや利害をもつ政党の用いるコミュニケーション戦略に焦点を当てている。環境圧力団体、政府当局、学会、個々の科学者/専門家、ビジネスや業界などがマスメディアを通じて論争的な環境問題をめぐってコミュニケーションを管理し影響力を行使しているのか?彼らはどのようにメディア報道に依存しており、環境ストーリーを彼らの有利なように「紡ぎ出して」いるのか?彼らは綿密に計画されたコミュニケーションやPRの実践を通じて、どのように世論や政策決定に影響力を行使しているのか?環境問題に関して成功するクレーム提示の主な構成要素はどのようなものか?

 成功の基準が検討され、成功した、あるいは失敗したコミュニケーション戦略やメディアキャンペーンの事例が示されている。本章でとくに焦点を当てているのは、いかにして主要なクレイム申し立て者(企業と環境圧力団体を含む)が情報提供とキャンペーンの目的でインターネットやその他の新しいコミュニケーション形態を活用しているかということである。コミュニケーション関連の文献では環境圧力団体のコミュニケーションやキャンペーン戦略に焦点が当てられることが多いが、本章では次第に大きな影響力をもつようになた企業コミュニケーションやイメージ管理戦略で締めくくっている。

第4章 ニュースとしての環境:ニュース価値、ニューメディア、ジャーナリスティックな実践

 前章ではメディア外部にある情報源やクレイム申し立て者に重点が置かれていたが、本章ではマスメディアについて扱う。ここでの焦点は、メディアやメディア専門家の役割、組織構成、コミュニケーション実践にある。そして、なぜ特定の環境問題がニュースになり、他の環境問題がニュースにならないのか、また、なぜある環境問題が争点になり、他の問題は争点にならずに終わるのか、という点を関連した調査研究を通じて解明する。

 また、環境問題の専門記者の発展が検討され、環境ジャーナリストが他のタイプの記者とどう違っているのかについても論じている。環境問題を報じるジャーナリストは、環境をめぐる論争に特徴的な科学的不確実性をどう取り扱っているのか、彼らはどのように客観性やバランスなどの伝統的なジャーナリスティックな基準をどう展開しているのか?新しい情報通信技術がジャーナリストの実践に及ぼす影響についても検討する。新しい技術やニュース組織に対する経済的プレッシャーは、ジャーナリストと情報源との間での力関係を情報源の方に死すとさせているのか、という点について検討する。本章の最後では、ニュースの社会学という枠組みがもつ限界について論じている。

第5章 ポピュラー文化、自然と環境問題

 本章では、伝統的なニュースの社会学が強調する、経済的プレッシャー、組織の構造、プロフェッショナルな価値/実践に加えて、より広い文化的共鳴やナラティブをも考慮する必要性について検討する。まず、スクリプト、文化的パッケージ、解釈パッケージ、文化的共鳴という概念に焦点を当て、それをもとに自然や環境についてのポピュラーメディアの表象のもつ特性と潜在的な「パワー」を理解する。

 本章では、環境問題のニュース報道を超えて、自然や環境がどのように他のメディアジャンル(テレビの娯楽番組、とくに野生生物に関する映画、テレビの自然番組)がイデオロギー的に構築されているのかを考察している。また、主要な文化的ナラティブやストーリーやイデオロギー的なクラスター、パッケージ、スクリプトなどの存続について探求している。

 本章では、メディアによる環境問題の構築における語彙選択の重要性を探究している。また、野生生物の映画や自然番組を通じて伝えられるより深いところにあるイデオロギー的価値を発見するためにナラティブ分析が重要な貢献をしていることにも触れる。選定された映画ジャンル(例:SF、自然映画など)に関する歴史的研究を取り上げながら、本章ではいかにして文化的ナラティブが自然や環境についての特殊なイデオロギー的解釈を反映し、形成しているかを論じている。これには、環境についての有力な解釈がコントロールや搾取の対象から保護されるべきものへと変化していることなどが含まれる。

第6章 「自然/ナチュラル」を売る:広告、自然、国家的アイデンティティ、ノスタルジア、環境イメージ

 本章では、広告における自然や環境のプロモーション的利用について検討を加えている。また、前章に続いて、自然や環境の構築が時間とともにどう変化してきたかを検討している。ここでは、広告が環境メッセージや認識を促進するために、「グリーン」や「環境にやさしい」製品を売り込むために、大企業や業界のイメージ改善のためにどのように利用されてきたかを示す。本章では、いかに自然/ナチュラルや環境が製品を販売するために構築され活用されてきたのかについて探求し、自然の利用が適切な定義や自然環境の利用の定義づけに貢献しているかを探求している。広告に含まれる自然や環境のイメージの活用がノスタルジアや国家的・文化的アイデンティティの概念との関連で分析されている。また、本章では、異なる文化間でのイメージのバリエーションについて研究し、こうしたイメージが文化的に固有のものか、それとも次第にグローバルでユニバーサルなものになっているのかという点についても検討を加えている。

第7章 メディア、公衆、政治と環境問題

 本章では、環境についてのメディアの表象や報道が公衆や政治的認識、行為にどう影響するかという永続的な問題に、コミュニケーション研究者たちがどのように取り組んできたのかを考察している。結局のところ、環境問題についてのメディア表象に関する多くの研究の背後にある前提は、これらのメディア表象が社会における人々の理解・意見や政策決定に一定の役割を果たしているということである。本章では、いくつかの主要な枠組みやアプローチ(例えば議題設定研究、世論研究、政策決定研究など)について論じている。ここでは、環境についてのメディア表象がどにょうに政治過程や人々の解釈に影響を及ぼしているか、関連する研究成果を検討している。

 最後に、著者は人々の環境問題理解におけるメディアの役割について、リニアな視点ではなく、「クレイムの循環」的な視点に立つことがより重要だとし、メディア報道が社会における他の「意味創造のフォーラム」と相互作用する複雑で多元的な方法の重要性を指摘している。

 本書は社会構築主義の立場から、環境問題に関するメディア報道の特質および人々の環境理解に及ぼす影響について、実証的なデータを駆使しながら論じた力作である。本書の想定する読者層は、メディア・コミュニケーションを専攻する大学生、環境問題についての専門家、環境運動の活動家などである。類書はほとんどないという現状からみて、貴重な入門的専門書といえる。詳しくは原書を参照されたい。

→ Environment, Media and Communication(2010)