前記事の続き。福島第一原発事故の報道を、KH Coderを使って内容分析してみた。ほんの手始めの段階だが、興味深い結果が得られた。対象記事は、朝日新聞の3月12日から14日までの3日間の原発事故関連記事のすべてだ。

 KH Coderには、「共起ネットワーク」の分析という手法が組み込まれている。同一の段落で、どのような語彙が共起するか、その傾向をネットワークのグラフで表示してくれるというツール。この分析にかけた結果を次に示す。出現頻度の高い語彙ほど、大きな円で示される。また、共起関連の強い語彙の間ほど、太字の線で示されている。「原発」がもっとも多いことは当然だが、「原子炉」が全体のネットワークの中心的位置を占めていることがわかる。その上には、「格納容器」「放射性物質」「圧力」「放出」など、原子炉事故関連の語彙が太いネットワークで結ばれていることもわかる。また、「水」がキーワードになっていることもわかる。これらが、原発事故直後の報道の核心にあることを示唆している。この段階では、「住民」「避難」、「津波」「被害」は周縁に位置している。こうした傾向が、時間とともに、どのように変化してゆくか、今後さらに対象期間を広げて追跡してみたいと思っている。

原発事故報道共起ネットワーク3

 これに加えて、階層型クラスター分析を行ってみると、少し異なる語彙間の関係性が浮かび上がってくる。下に示したのは、そのデンドログラムだ。5つ位のクラスターに分かれている。「炉心冷却関連」「原子炉施設関連」「原発事故事象関連」「住民の被爆、避難関連」「その他」といった感じだろうか。

原発報道クラスター分析