1982年にサービスを開始し、フランス版WWWとも呼ばれた「ミニテル」(minitel)のサービスが、ちょうど30年後の2012年6月30に終了した。最盛期には、900万のミニテル端末が家庭におかれ、2500万人ものフランス人が利用し、26000ものサービスが提供されていた。提供されていたサービスとしては、電子電話帳、天気予報、チケットの予約、オンラインバンキング、ショッピング、ポルノサイト、メール、チャットなどがあり、WWW開始よりはるか以前に、フランス人は世界でもっとも先進的なネットサービスを享受していたのである。

minitel

 しかし、1990年代に入り、インターネット上でWWW(ウェブ)のサービスが提供されるようになるとともに、ミニテルはこれに対する競争力をもつことができず、1990年代半ばを頂点として、徐々に衰退していったのである。フランスでは、ミニテルの成功によって、インターネットの普及が遅れることになったとも言われている。

 日本やイギリス、ドイツなどでも、ビデオテックスと呼ばれる同種のテレコムメディアが実験的に導入されたが、いずれの国でも失敗に終わったが、フランスだけは例外で、その使いやすさとコンテンツの魅力、端末の無料配布などによって、一時期は大成功を収めたのであった。ミニテルでもっとも人気のあったコンテンツは、「ミニテル・ローズ」(minitel rose)と呼ばれるチャットサービスだった。これは、コールセンターで性的会話のお相手をしてくれる匿名の女性と有料でおしゃべりを楽しむことができるサービスだった。なかには、これにはまって月に何千フランも使うユーザーもいたということである。

 しかし、それもインターネット上で同様のアダルトサイトが提供されるようになってからは、人気が翳ることになった。インターネットを中心とするメディア生態系が繁栄する中で、ミニテルはついに生き延びることができなかったのである。

1982年のミニテル

・ミニテルの終焉: