毎年、私の受け持っている「メディアコミュニケーション概論」の授業では、最初に「情報」とはなにか、というテーマをとりあげている。そこでまず紹介するのは、吉田民人さんとクローロ・シャノンの<情報>概念だ。吉田さんによれば、情報は宇宙を構成する3つの要素の1つだという。

 情報という概念については、いまだに広く社会的に認知された唯一の定義が存在するわけではない。そのため、単なる断片的な「データ」と等値される場合も少なくない。だが学問的には、情報は物質やエネルギーと並んで、宇宙における根源的な概念ととらえることができる。情報を効率的に処理するコンピュータなどの機械が出現したのは20世紀だが、情報そのものははるか以前から存在している。
 
 物質やエネルギーの存在は約137億年前といわれるビッグバンによる宇宙生成まで遡るが、情報が誕生したのは地球上に生命が出現した約38億年前のことである。すなわち、情報は生命現象と不可分の存在と考えられている。

 このように、情報概念を宇宙における根源要素として捉えたのは、吉田民人である。吉田が初めて情報論を展開したのは、1967年に発表した「情報科学の構想」という論文(吉田, 1967)である

 この論文において吉田は情報を4つのレベルに分けて定義している。それによると、「最広義の情報」とは、物質、エネルギーと並ぶ自然現象の根元的要素であり、「物質-エネルギーの時間的・空間的・定性的・定量的なパターン」である。また、「広義の情報」は、「<情報物質>即ち<パターン表示を固有の機能とする物質-エネルギー>のパターン」あるいは「意味をもった記号の集まり」である。「狭義の情報」とは、「広義の情報概念のうち、<伝達、貯蔵、ないし変換システムにあって認知、評価、ないし指令機能を果たす><有意味シンボル集合>」と定義されている。最後に、「日常的な情報概念」は、ふだん日常的に使われている「データ」(伝達システムの認知性外シンボル)、や「知識」(決定前提を規定しうる耐用的なデータ)と区別される概念として、<伝達されて決定前提を規定する単用的な認知性外シンボル>と定義されている。

 情報が「物質-エネルギーの時間的・空間的・定性的・定量的なパターン」だとすれば、情報の起源は、現在の宇宙が誕生した137億年前にまでさかのぼると考えることも可能である。その場合、いったい「情報」「物質」「エネルギー」のうちどれが最初に誕生したのか、それとも同時に生まれたものなのか、ということが問題になる。宇宙最初の物質は、基本的な素粒子がいくつかあったのだろう。そうした素粒子はなんらかのパターンを備えていたはずだから、情報もまた存在したという可能性がある。シャノンのつくった「ビット」という単位は、最初の素粒子の誕生とともに測定可能であったのかもしれない。

 こんな哲学めいたことを話すと、学生はきょとんとした顏をする。しかし、「情報」は、宇宙進化のどの段階でも、きわめて重要な役割をはたしてきたことは確かなので、どうしてもこういった話から始めてしまうことになる。情報の進化といえば、137億年前の「宇宙スプーン」状態の混沌とした情報(エントロピー)から、生命の誕生する40億年前の地球での「生命情報」の誕生、そして、「ビットバン」とも呼ばれる21世紀の情報革命までの歴史をたどってみるのも一興である。