「ネット依存症」という言葉があります。1日中ネットにのめり込んで、病理的な症状を示す人のことをいうようです。この言葉をつくったのは、アメリカのキンバリー・ヤング博士です。1999年の調査では、全体の6%がネット依存症を示したとのことです。

 依存症の程度をはかる、インターネット依存度尺度は、次の20項目からなっています(IATによる)。
 
1.気がつくと、思っていたより長い時間ネットをしていることがある
2.ネットを長く利用していたために、家庭での役割や家事をおろそかにすることがある
3.家族や友達と過ごすよりも、ネットを利用したいと思うことがある
4.ネットで新しく知り合いを作ることがある
5.周りの人から、ネットを利用する時間や回数について文句を言われたことがある
6.ネットをしている時間が長くて、学校の成績が下がっている
7.ネットが原因で、勉強の能率に悪影響が出る
8.他にやらなければならないことがあっても、まず先にメールをチェックすることがある
9.人にネットで何をしているのか聞かれたとき、いいわけをしたり、隠そうとしたりすることがある
10.日々の生活の問題から気をそらすために、ネットで時間を過ごすことがある
11.気がつけば、また次のネット利用を楽しみにしていることがある
12.ネットのない生活は、退屈でむなしく、わびしいだろうと不安に思うことがある
13.ネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、いらいらしたり、怒ったり、言い返したりすることがある
14.夜遅くまでネットをすることが原因で、睡眠時間が短くなっている
15.ネットをしていないときでも、ネットのことを考えてぼんやりしたり、ネットをしているところを空想したりすることがある
16.ネットをしているとき「あと数分だけ」と自分で言い訳していることがある
17.ネットをする時間や頻度を減らそうとしても、できないことがある
18.ネットをしている時間や回数を、人に隠そうとすることがある
19.誰かと外出するより、ネットを利用することを選ぶことがある
20.ネットをしている時は何ともないが、ネットをしていないときはイライラしたり、憂鬱な気持ちになったりする
  それぞれ、0=あてはまらない~5=あてはまるの6点リッカート尺度になっていて、合計得点が70点以上の人は、依存度が高いと判定されます。私など、このテストを受ければ、「ネット依存度が高い」と判定されることは間違いないでしょう。

 2014年に大学の授業で実施したアンケートでも、かなりの学生が高いネット依存度を示していました(次の図)

 


















 しかし、このテストには問題があります。たとえ、高得点を得ても、病理的症状がないというケースもあるからです。私などは、むしろ、ネットのおかげで、脳内刺激が活発化され、ボケ防止に役だっています。

 問題が起きるとすれば、次のようなケースでしょう(『朝日新聞』2016年6月5日)
 
 国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)は、2011年にネット依存治療研究部門をつくった。患者の約8割が子どもだが、30~40代を中心に大人も通ってくる。

 樋口進院長は「ネットの使いすぎで生活に明らかな支障が出ていれば、治療の対象です」と話す。相談は、オンラインゲームや掲示板への書き込み、SNSがやめられないといった内容が多く、「夫が一日中スマホを触っている。離婚したい」などと訴える女性もいた。 樋口院長は「パソコンに比べスマホは常に携帯している人が多く、治療が非常にやっかいだ」と指摘する。

 デジタルネイティブ世代の若者は、多かれ少なかれ、ネット依存の傾向にあるのではないでしょうか。むしろ、問題で危険なのは、歩きスマホとか、SNSでのプライバシー過剰露出などではないかと思います。