メディア・リサーチ

メディアとコンテンツをめぐる雑感と考察

2014年12月

デジタルネイティブとは?

 デジタルネイティブとは、生まれながらに、デジタルメディアに親しんでいる若い世代のことをさしている。1980年代以降に生まれた人たちのことをいうのが一般的である(プレンスキーら)。橋元良明らは、1976年前後に生まれた「76世代、86年前後に生まれた「86世代」、96年前後に生まれた「96世代」を区別している。 木村忠正は、1981年以降に生まれた世代をデジタルネイティブとし、4つの下位世代に分解して、その特徴を詳しく検討している。 プレンスキーによると、デジタルネイティブには次のような特徴があるという。

  • 複数のタスクを同時に処理できる
  • 情報を猛スピードで受けとることに慣れている
  • テキストよりも先にグラフィックを見るのを好む
  • ランダムに情報をアクセスすることを好む
  • インターネットにつながっているときが好き
  • 仕事よりもゲームを好む

デジタルネイティブ度の測定

 これらの先行研究を参考に、「デジタルネイティブ度」を測定するための質問項目を作成してみた。これらの項目について、「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた人の比率を計算してみると、次のような結果が得られた。調査対象は、デジタルネイティブの世代である。
 
ネイティブ

 グラフをみると明らかなように、同じデジタルネイティブの若者といっても、回答率のばらつきが大きくみられ、ひとくくりに「デジタルネイティブ」と決めつけることはできない。また、この尺度自体、一次元的なものではなく、多次元的な尺度であることがわかった。因子分析してみたところ、4つの因子に分かれているという結果が得られた。

 第1因子は、「ブログやSNSにコメントをつける」「SNSやブログを頻繁に更新している」「カメラで撮影した写真や動画は、写真・動画共有サイトにアップロードしている」の3項目で因子負荷量が高い。これは「情報発信」因子と名づけることができるだろう。第2因子は、「テレビや新聞で気になったことがあると、すぐにネットでチェックする」「関心のある最新の情報をつねにネットでチェックしている」「テレビを見ながらスマホを利用したりすることが多い」の3項目で因子負荷量が高い。これは、「マルチタスク」因子と呼ぶことができるだろう。第3因子は、「ネットでクレジットカード決済をするのに抵抗を感じない」「いろんなクラウドサービスを利用している」「新しいスマホやタブレットが出るとすぐに欲しくなるほうだ」で負荷量が高い。これは、「イノベータ度」と呼ぶことができよう。第4因子は、「メールやLINEの通知が来ると、すぐに返信するほうだ」「メールやチャット、LINEで返信がすぐにこないと不安になるほうだ」の2項目で因子負荷量が高い。これは、「スピード」因子と名づけることができるだろう。こうしてみると、プレンスキーの指摘するデジタルネイティブの特徴をある程度反映した結果と考えることができるだろう。タプスコットは、デジタルネイティブの行動基準の一つとして、「イノベーター」性をあげており、これは本調査の結果とも一致する。

 このうち、主成分分析の第1因子で負荷量の比較的高かった9項目をもとに、「デジタルネイティブ度」スケールをつくってみた(α係数=0.78)。尺度構成項目(リッカート4点)は、次のとおり:

・新しいスマホやタブレットが出るとすぐに欲しくなる方だ
・テレビを見ながらスマホを利用したりすることが多い
・テレビや新聞で気になったことがあると、すぐにネットでチェックする
・関心のある最新の情報をつねにネットでチェックしている
・いろんなクラウドサービスを利用している
・カメラで撮影した写真や動画は、写真・動画共有再度にアップロードしている
・出かけたり、買い物をしたりするとき、まずネットで検索する
・ブログやSNSにコメントをつける
・SNSやブログを頻繁に更新している

 この尺度とFacebook、Twitter、LINEの利用頻度との相関を計算してみたところ、いずれも有意な正の相関がみられた。つまり、デジタルネイティブ度が高い人ほど、Facebook、Twitter、LINEの利用頻度が高くなるという関連が認められたのである。 言い換えると、デジタルネイティブ度の高い人ほど、SNSを活発に利用しているというユーザー像が鮮明になったといえる。

 次に、Facebookでの情報開示度を従属変数とし、Facebook利用頻度、デジタルネイティブ度、性別、年齢を独立変数とする重回帰分析を行ったところ、もっとも大きな有意な偏回帰係数を示したのは、デジタルネイティブ度であった(β=0.382)。Twitterでの情報開示度を従属変数として、Twitter利用頻度、デジタルネイティブ度、性別、年齢を独立変数とする重回帰分析を行ったところ、もっとも大きな有意の偏回帰係数を示したのは、やはりデジタルネイティブ度であった(β=0.301)。いずれの場合にも、SNS利用頻度は有意な影響を示していなかった。つまり、SNSの利用頻度よりも、デジタルネイティブ度のほうが、SNSでの情報開示度に対し、大きな関連をもっていたのである。

 このように、「デジタルネイティブ度」は、SNS利用と強い関連をもっているが、同じ若者でも、デジタルネイティブ度の分布はばらついており、若者層がすべてデジタルネイティブな特性を示すとは限らないということも確認された。このことは、近年のデジタルネイティブに関する研究でもしばしば指摘されているところである。これについては、稿を改めて紹介したいと思っている。

 デジタルネイティブ度を測定するための尺度については、海外でもいくつか研究がなされているが、まだ標準的な尺度はつくられていないようだ。今後の研究課題の一つといえるだろう。
デジタルネイティブに対する懐疑論
 そもそも、デジタルネイティブという「世代」があることについては、懐疑論的な見方も少なくない。例えば、Bennet et al.( 2008)やSelwyn(2009)は、デジタルネイティブに関する文献をレビューして、現代の若者をひとくくりに「デジタルネイティブ」と呼ぶのは正しくないとしている。同じ若者世代でも、ICTの利用に長けた者とそうではない者がおり、年齢集団、社会経済的属性などと密接な関連をもっているという。つまり、デジタルネイティブ度には個人差があるということだろう。したがって、デジタルネイティブ度によってSNS利用がどう異なるかを調べることには一定の妥当性と意義があるのではないだろうか。

参考文献:
Bennet, S et al., 2008, "The 'digital natives' debate: A critical review of the evidence", British Journal of Educational Technology, Vol. 39 (5)
Hargittai, Eszter, 2010, "Digital Na(t)ives? Variation in Internet Skills andd Uses", Sociological Inquiry, Vol 80(1).
Selwyn, Neil, 2009, "Digital native - myth and reality, Aslib Proceedings: New INformation Perspectives, Vol.61, No.4, PP.364-379.
 
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SNSの利用目的

 昨今では、複数のSNSに加入し、利用目的に応じて使い分けている人が多いように思われる。実際にはどうなのだろうか?具体的な利用目的を聞いてみたところ、次のような結果が得られた。
purpose
 

 Facebookの場合には、「友達の近況を知るため」というのがもっとも多く、「友達や知り合いとコミュニケーションをとるため」「暇つぶしのため」がこれに次いで多くなっている。Twitterの場合には、「友達や知り合いとコミュニケーションをとるため」がもっとも多く、「暇つぶしのため」がこれに続いている。LINEの場合には、「友達や知り合いとコミュニケーションをとるため」が圧倒的に多い。いずれの場合にも、SNSの最大の機能である交流的な目的が多いという結果が得られた。LINEの場合には、「学校・サークル・職場などの事務的な連絡」という用途が第二位にあがっており、LINEの特性があらわれている。また、Twitterでは、「情報収集のため」という環境監視的な目的が上位にあがっているのが特徴的といえる。

やりとりする相手

 SNSの利用目的は、やりとりする相手によっても異なるのではないだろうか。Facebook、Twitter、LINEのそれぞれについて、ふだんよくやりとりする相手を複数回答で質問してみた。その結果は、次のとおりである。
aite
 
 Facebookの場合には、「友人」がもっとも多く、「親しい友人」がこれに続いている。TwitterとLINEの場合には、「親しい友人」がもっとも多く、「友人」がほぼ同じくらいいる。 このように、上位2位までをみると、Facebook、Twitter、LINEのいずれでも、友人とのやりとりが多いという共通の結果が得られている。「第3位以下をみると、それぞれのSNSらしい特徴がみられる。Twitterでは、「ネット上でのみ付き合いがある友人」が、LINEでは「家族」がそれぞれ第3位に入っている。Twitter上のつながりは、強い紐帯プラス弱い紐帯、LINE上のつながりは、強い紐帯といった違いがあらわれているように思われる。LINEの場合には、 「職場、アルバイト先の人」が第4位に入っており、仕事つながりの相手が加わっており、利用目的との関連がみられる。
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実名か匿名か

 SNS上で自己開示するかを示す基本的な指標としては、実名で利用するか、それとも匿名ないしハンドル名で利用するかという点をあげることができる。Facebook、Twitter、LINEのそれぞれについて、この点を質問したが、その結果は、下の図に示すとおりである。
real name
 Facebookの場合には、95%とほとんどのユーザーが実名で利用している。また、LINEでは約80%のユーザーが実名で利用している。これに対し、Twitterの場合には、実名で利用しているユーザーは27%にすぎない。ハンドル名ないしニックネームで利用しているユーザーが約7割を占めている。このように、FacebookやLINEは実名利用が多く、Twitterは匿名での利用が多いという結果が得られた。

開示情報(投稿、やりとり)の内容

 それでは、SNS上で大学生はどのようなことを投稿(自己開示、やりとり)しているのだろうか?Facebook、Twitter、LINEのそれぞれについて、同じ設問をしたので、その結果を比較してみた(下図)。
kaiji-contents

 FacebookとTwitterでは、「自分の趣味・興味をもっていることについて」がもっとも多く、「食べたものや飲んだものについて」がこれに続いている。%値は異なっているものの、開示内容の上位は類似している点が興味深い。LINEの場合は、「友人について」がもっとも多く、「自分の趣味・興味をもっていることについて」「仕事やアルバイトについて」「所属しているゼミやサークルについて」がこれに続いている。

 開示情報の量を比較すると、大部分の項目でTwitterの回答率が高いという結果が得られたが、これはどうしてなのだろうか?例えば、「自分の趣味、興味をもっていることについて」は、Twitterでは76%の高率だが、Facebookでは37%にとどまっている。

 その原因はいろいろ考えられるが、やはり、利用頻度が大きく影響しているのではないか?そこで、利用率と「自分の趣味・興味をもっていること」の開示率の関連をみると、次のようになっている。
interest frequency
 やはり、利用頻度が高くなるにつれて、開示度も高くなるという関連がみられる。 

プロフィール画像の種類

 ふだんSNSで使っているプロフィール画像に何を使っているかを質問したところ、次のような結果が得られた。
profile

 どのSNSでも、「自分の写真」がもっともよく使われていることがわかる。次に多いのは、Facebookでは「画像なし」であり、Twitterでは「趣味に関する画像」、LINEでは「その他の画像」となっている。

 
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 11月に実施した「大学生のSNS利用に関する調査」の結果が出たので、主に単純集計の結果を何回かにわたってご紹介したいと思う。

調査の概要

・調査対象:都内大学生311人(1年生~4年生)
・調査時期:2014年11月
・調査方法:質問紙による集合調査  

SNSの利用状況

 現在提供されているSNS(広義)をリストアップし、それぞれについて、利用しているかどうかを尋ねた。回答率の高い順に並べると、つぎのようになっている。

SNS Usage
   LINEの利用率がもっとも高く、ほぼ全員が利用しているという結果になった。Twitter、ユーチューブがこれに続き、約89%とこれも非常に高い利用率となっている。Facebookの利用率は42.8%であり、TwitterやLINEに比べるとやや低くなっている。

 次に、3大SNSとも呼ばれるFacebook、Twitter、LINEについて、利用頻度を求めたところ、次のような回答結果が得られた。比較のために、ケータイメールの利用頻度も合わせて表示している。
 
SNS Frequency

 LINEの利用頻度がもっとも高く、「1日に数回以上利用する」人の割合が85.2%にも達している。Twitterの利用頻度も高く、「1日に数回以上利用する」人の割合が74%となっている。これに対し、Facebookとケータイメールでは、「1日に1回程度」の割合がもっとも高くなっている。LINEとTwitterの利用頻度の高さには、正直言って驚かされる。
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