メディア・リサーチ

メディアとコンテンツをめぐる雑感と考察

カテゴリ: ソーシャルメディア

 フェイスブックのCEOであるザッカーバーグは、現代社会において、プライバシーの社会規範は薄れてきていると指摘しています。けれども、現代日本の若者のプライバシー意識は、予想以上に高いというのが現実です。

 先日、授業の中で、オンライン・プライバシーに関するレポート課題を出したところ、多くの学生は、プライバシーを重要視しており、かつ、日頃から、SNSにおいても、さまざまなプライバシー対策をとっていることがわかりました。具体的には、Twitterなどに鍵をかける、アカウントをハンドル名にする、プロフィールに自分の写真を載せない、などの対策をとっているようです。たとえば、つぎのような回答がありました。
 私はプライバシー 保護に関して日ごろから気をつけている。例えば Twitter は不 特定多数の人が見ることがで きるので、アカウントに鍵をかけて私がフォローを承認した人以外見ることができないようにし、知り合いだけ承認するように している。またアイコンの画像は承認した人以外も見ることができるので、顔 が写っている写真は選ばない。名前に関してはフルネームにしているが、漢字ではなくひらがなにしている。写真も住所などが分かるようなものは一切 載せていない。このように対策は結構している。

 また、相手によって、複数のアカウントを使い分けるといった対策をとる学生も少なくありませんでした。
 ツイッターの場合、1 人のユーザーにつきアカウント は複数作れるので、1 つを、本名を使わず、写真なども載せないが、多くの人が閲覧できるアカウン トとして利用し、もう 1 つのアカウントを、本名を使い、写真も載せるが、限 られた人にしか閲覧できないようにし利用する。このように、複数のアカウン トを使い分けることによって、プライバシーを保護しつつ、プライバシーを公 開できると考える。

Twitterに鍵をかけることを、「鍵アカ」というそうですね。この言葉が流行していること自体、若者がプライバシーに敏感であることを示すものといえるのではないでしょうか。
 Twitter では「鍵ア カ」というものが存在し ている。通常の Twitter の仕様では自分の投稿は不特定多数の人が誰でも見るこ とができるようになっているが、個人の設定でアカウントに「鍵」をつけるこ とが可能であり、鍵をつけた場合、自分が許可した人以外の人からは自分の投 稿は全く見られないようになる。鍵をつけた状態で自撮り画像を投稿したとしても自分の知り合い以外の不特定多数の人間からは見られることはなく、ある程度プライバシーが守られる仕組みになっている。プライバシーの侵害から逃れるためにこのような機能を使うことはかなり有効なのではないだろうか。
 
 また、「裏垢」という言葉もあることも、今回のレポートで初めて知りました。
 SNS のアカウントを複数持つ人が特に若者は多く感じる。裏のアカウントと言 う意 味で「裏垢」と呼ばれるがそこには限られた一部の人だけが見ることができる状態にされ ており、その「裏垢」だけに写真をあげているパターンをよく見られる。また、みんなに 公開しているアカウントには写真をぼかして加工してアップしているが、裏垢には堂々と 個人が特定できるようにアップされてい るのを見る。見ることができる人が限られることでプライバシーの心配が低く なることがこの状況を作り出しているように思う。特に裏垢 は親しい人にのみに公開されているパターンがほとんどである。また、鍵垢も自分が知っ ている 限られた人だけなのでプライバシー面などでも安心できるのだろう。
   このように、現代の若者は、決してプライバシーに無頓着なわけではなく、彼らなりのネット・リテラシーを発揮して、プライバシーの線引きをしているのです。最近、実名主義のSNSであるfacebook離れが、若者を中心に増えているといわれますが、背景には、こうした若者の高いプライバシー意識があるのではないかと思われます。
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 「メディア・エコロジー」という講義の中で、プライバシー・パラドックスについて、次のようなレポート課題を出しました。
 一般に、多くの人々は、プライバシーに対する不安を日頃から持っており、高いプライバシー保護意識をもっています。それとは裏腹に、ブログやSNSなどを通じて、ティーンズなどの若者はプライバシーをさらけ出しているといわれます。このように、一見矛盾する傾向のことを「プライバシー・パラドックス」と呼んでいます。また、フェイスブックのCEOであるザッカーバーグは、現代社会において、プライバシーの社会規範は薄れてきているとも指摘しています。至るところに設置された監視カメラやウェブ訪問歴などで、個人情報が知らず知らずに収集されているのが現状です。また、最近では、インスタグラムなどのSNSで自撮り写真を積極的に公開する人も増えているようです。

 あなたは、「プライバシー・パラドックス」について、どう思いますか。それは現実に存在すると思いますか。プライバシー・パラドックスがもしあるとすれば、どのようにすれば解決できると思いますか。

 また、SNSが普及し、パーソナルデータが膨大に流通する現代の高度情報化社会において、従来のプライバシー権は変化していると思いますか。それとも、プラバシー権は依然として重要だと思いますか。
 提出者269名中、なんと252名が、「プライバシー・パラドックスは存在すると思う」と回答しました。驚くべき数字です。プライバシー・パラドックスが生じる理由として、多くの学生があげていたのは、他者からの承認欲求、同調性(周りのみんながやっているから)、プライバシーを晒すことへのリスク意識の低さ、リア充を顕示したいという欲求、孤立への恐怖などでした。現代の若者が、プライバシー・パラドックスという大きくて複雑な問題に直面していることを改めて認識させられました。

 プライバシー・パラドックスを解決するための手段としては、TwitterやInstagramなどのSNSに鍵をかける(いわゆる鍵アカ)という回答が多く見られました。また、ネットリテラシー教育の必要性を論じたレポートも多く見られました。

 いずれにしても、世代の違う私にとって、非常に教えられることの多い課題レポートでした。詳しい検討は、また改めて、、、 

関連記事:
ストーカー被害、SNS対応を徹底…警察庁通達(読売オンライン 2016年6月20日)
 
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 Flickrというと、オンラインの写真ストレージと思っている人が少なくないようです。Pro会員になると、1TBまでの写真を保存することができます。アルバムごとに整理することも簡単にできます。

 しかし、Flickrの最大の魅力は、自分が投稿した写真を、世界中の写真好きの人たちが共有し、互いにフォローしあったり、お気に入りに登録したり、コメントを載せたりといった、ソーシャルメディアとしての特徴にあります。

 たとえば、私が最近投稿した花菖蒲の写真には、次のようなコメントが寄せらました。

Welcome to Flickr - Photo Sharing 2016-06-16 08-45-39 








 ここで、Sue Hibberdさんの顔写真をクリックすると、この方のFlickrページにアクセスできます。そこには、美しい花や風景の写真が多数掲載されていました。

 そこで、私はさっそく、Sueさんをフォローすることにしました。これに対し、Sueさんが後日私をフォロー返しすれが、そこには、同じような写真を愛好する同士のコミュニティが生まれます。

 また、Flickrには多数のテーマ別Groupが作られています。花の写真が好きな人は、Flowers Groupに参加すると、すてきな写真にたくさん出会えます。世界遺産の写真に関心がある人には、UNESCO WOrld Heritage Siteというグループが用意されています。

 もし私が、世界遺産を訪ね、写真を撮ったら、このグループに投稿すれば、このグループに貢献できると同時に、愛好者とのコミュニケーションが生まれる可能性があります。

 このように、Flickrは単なる写真ストレージサービスであるだけではなく、ソーシャルメディアでもあるのです。いわゆる写真のプロというよりは、アマチュア写真家のコミュニティという性格が強いので、私のようなアマチュアの写真好きにとっても、敷居の低いメディアということができるでしょう。

 ちなみに、私の参加しているGroupは、次の通りです。
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 本年度の研究費で実施した「SNS利用とプライバシー意識に関する調査」の報告書ができましたので、とりあえずこのブログにリンクを貼っておきます。来年度の学部紀要に投稿する予定です。 

プライバシー・パラドックス再訪

  
本研究では、FacebookおよびTwitterの利用者を対象として、SNSの利用実態およびオンライン上のプライバシー保護意識に関する実証的調査研究を行い、SNSを通じての自己開示とプライバシー意識の乖離現象(プライバシー・パラドックス)の実態と原因の解明を試みた。調査対象は、20歳〜59歳のインターネット利用者620名。分析の結果、プライバシー意識とFacebook自己開示量の間には、負の相関がみられた。これは、プライバシー・パラドックスを否定する結果といえる。ただし、プライバシー意識とTwitter自己開示量との間には有意な相関はみられなかった。FacebookTwitterにおける自己開示度を従属変数とする重回帰分析を行ったところ、両者とも、年齢との間に負の相関、ネットリテラシーとの間に正の相関がみられた。プライバシー意識については、Facebookで負の相関が有意にみられたのに対し、Twitterでは無相関であった。このことから、少なくともFacebookに関しては、プライバシー・パラドックスは生じていないこと、自己開示度については、年齢とネットリテラシーが重要な規定要因になっているという知見が得られた。

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ヤフー知恵袋とは?

 近年急速に利用者が増えてきたソーシャルメディア。その中でも利用頻度が高いのは、ウィキペディアやヤフー知恵袋などの「知識共有コミュニティ」だろう。なかでも、「ヤフー知恵袋」は、何かわからないことがあって質問したり検索すると、すぐに解答が得られる便利なネットサービスだ。ヤフー知恵袋とは、ウィキペディアによれば、「Yahoo! JAPANが運営する、電子掲示板上で利用者同士が知識や知恵を教え合うナレッジコミュニティ、知識検索サービス」のことをいう。Q&Aサイトとも呼ばれている。2004年にサービスを開始、2006年からは携帯電話でも利用できるようになった。知恵袋利用者のことを「チェリアン」といい、中でもベストアンサーを多く出すなど、活躍中のチェリアンのことを「専門家」「アドバイザー」「知恵袋マスター」 などという 。知恵袋のサービスは、これらボランティアのチェリアンによって支えられている。ただし、ウィキペディアと同様に、解答は必ずしも正確なものとはいえないことに注意する必要である。また、知恵袋などのQ&Aサイトを悪用して大きな社会問題に発展するケースもある。そのような問題事例としては、2011年2月に起きた「入試問題カンニング事件」、2012年1月に発覚した「やらせ書き込み(ステマ)」事件などがある。それぞれの事件について、概要を振り返ってみたい。  

大学入試問題カンニング事件

  2011年2月25日~26日、京都大学の数学と国語の入試で、1人の受験生が試験時間中に、隠し持っていた携帯電話から試験問題をヤフー掲示板に投稿し、正解を募っていたことがわかり、新聞やテレビニュースで大きく取り上げられ、新手のカンニング事件として社会問題になった。27日付けの『朝日新聞』は次のように報道している。
京大文系学部の数学の試験で、問題となった最初の書き込みは開始から7分後。投稿者が「数学の問題です」と返答を募り、「解答だけでなく途中計算もよろしくお願いいたします」と記し、試験時間中の午後2時9分、別の会員が解答例をつづって、末尾に「いかがでしょうか?」と結んだ。翌26日の英語の試験でも、試験開始7分後の午前9時37分、前日と同じIDを持つ投稿者が「次の文を英訳してください」と投稿。その6分後、別の会員から英文の解答例が示された。
 

事件発覚のきっかけ

 事件が発覚したきっかけは、『京都大学新聞』の記者が、26日の正午すぎ(試験終了直後)、広報課からメディア向けの英語の試験問題を窓口で受け取り、問題文の出典をインターネット上で調べていたところ、「ヤフー知恵袋」で、英語の試験問題2問の英訳を求める質問を発見したことにあった。そこで、午後0時19分、京大新聞のツイッター上に「京大入試 試験問題流出か?」と、「ヤフー知恵袋」のアドレスと共に書き込んだところ、投稿を転載するリツイートが広がり、ネット上で話題になり、マスコミでもいっせいに大きく報道されることになったものである。いわば、ソーシャルメディアが事件を引き起こし、また迅速に社会的な認知をもたらすことになったのである。

事件の展開と結末

 その後、同志社大学、立教大学、早稲田大学でも、同一人物と見られる受験生が同様のカンニングをしていたことが判明し、事件は拡大の様相を示した。京都府警が捜査を進めた結果、犯人は山形県出身で仙台の予備校に通う浪人生であることがわかった。警察当局は、捜査の過程で、ヤフージャパンからサーバー上の個体識別番号の提供を受けてNTTドコモ側に照会し、契約者を突き止めたとみられる。

 この予備校生(19)は3月3日、大学の入試業務を妨害した疑いがあるとして、偽計業務妨害容疑で京都府警に逮捕された。取り調べの結果、容疑者の受験生は、試験監督の目を盗むため、携帯を左手で股の間に隠し持ち、文字を入力したり画面を確認したりしていたとみられる。朝日新聞の報道では、次のように説明されている。
府警の説明によると、予備校生は母親名義のNTTドコモの携帯電話を試験会場内に持ち込んでいた。携帯はスマートフォンではなく、一般的な機種だったという。
 捜査関係者によると、府警の調べに対し、予備校生は試験会場の自席から携帯電話でネットに接続し、掲示板に投稿したり、別の投稿者から寄せられた解答を確認したりしていたと説明。試験監督に見つからずに携帯を操作する手口について、「左手で携帯を持ち、股の間に隠して設問を入力した」などと話しているという。また、掲示板上に書き込まれた解答を答案用紙に写す際には、左手に持った携帯の画面を確認しながら、右手の筆記具で答案に書き写したとみられる。(『朝日新聞』2011年3月4日夕刊)
 まさに、デジタルネイティブのケータイ・リテラシーの高さをまざまざと見せつける事件だったといえる。その後、この未成年の容疑者は山形の家庭裁判所に送られ、少年は非行事実を認めたが、本人が十分に反省していることから、不処分となり、事件は決着をみたということである。

クチコミサイトへのやらせ投稿事件

 これは「ヤフー知恵袋」だけに限った話ではないが、ソーシャルメディアの爆発的普及と軌を一にして、ヤフー知恵袋を含むネット上の「口コミサイト」にやらせ投稿することによって、消費者を欺く行為が社会的な問題になった。朝日新聞の2011年11月3日朝刊には、「やらせ請負業者、出現 ネット口コミ、サクラ暗躍」という記事がみられる。その手口は、あるネット関連会社の証言によれば、次の通り。
最大規模の口コミサイト「ヤフー知恵袋」などで「やらせ」書き込みを請け負っていた。化粧品会社の依頼を想定し「ニキビ跡を治すには?」などの質問を探し「○○のブランドは全部いいけど、私に合ったのは洗顔!」と書き込む、などと例示。質問自体を作る「自作自演」もする。書き込むたびに違うIDや回線を使い、サイト運営者に目をつけられにくくするという。
 同社の場合、初期費用は3万円で、月15回の書き込みで4万円、50回なら11万円。資料が流出したことで現在はサービスを見合わせているというが、担当者は「質問まで作るのでやらせと言えばやらせ。広告であることを隠した点は問題かもしれないが、サイト規約違反の意識はなかった」と悪びれる様子はない。「ホームページのアクセス数アップサービスなどに携わる業者は、どこでもやっている。当たり前のことです」(『朝日新聞』より)
 消費者庁によると、利用者を装った書き込みは、消費者に間違った認識を与える点で景品表示法が禁じる不当表示に当たる可能性がある。しかし、行政処分の対象は書き込み業者ではなく依頼者。やらせの線引きは難しく、処分された例はないという。

 こうした業者によるやらせの書き込みについては、翌2012年1月に、人気グルメ関連口コミサイト「食べログ」を運営するカカクコムが、好意的なレビューを投稿しランキングを上げるなどと飲食店に持ちかける「やらせ業者」の存在を発表し、世間でも広く知られるようになった。カカクコムの調べによると、恣意的な投稿で人気ランキングを操作する、と店に持ちかける不正業者がいることがわかり、39業者を特定したという。『アエラ』の記事によると、こうしたやらせ投稿業者の手口は、次のようになっていた。
手口は古典的だ。50~150字程度の好意的なクチコミを、顧客のサイトに次々投稿していく。「やらせに見えない」という文章と「屈強なルーチンワーク(機械的作業)部隊」がセールスポイントだ。
 料金(税抜き)は、月10件で9万8千円、25件で19万8千円、50件で29万8千円。月200件だと10%、500件なら20%の割引を設定している。逆に、投稿に商品購入が必要な場合は、追加料金を請求していることから、商品に触れず商品レビューを書いていたこともわかる。
 各サイトは投稿にかかる作業量で3分類される。最も作業が大変な「S」は「食べログ」や「アマゾン」、比較的手間のかかる「A」は「Yahoo!掲示板」や「みんなのウェディング」、最も負担の少ない「B」は「みんなの就職活動日記」や「フォートラベル」などとなっている。
 被害を受ける口コミサイトも、こうしたやらせ投稿を黙認しているわけではない。カカクコムの場合、法的措置も含めて厳正に対処するとしている。3月に入って、「カカクコム」は、口コミ投稿者の携帯電話番号による認証制を始めた。1人で複数の投稿者を装う不正を防ぐのが狙いだという。
今回、やらせ投稿業者の存在を確認したカカクコムは、やらせ投稿をやめない業者に対しては「法的措置も視野に厳正に対応する」としている。ネットに関する法的問題に詳しい松尾明弘弁護士は、やらせ投稿業者に法的責任を問う場合には、投稿によって消費行動がゆがめられたかどうかがポイントと話す。
 しかし、現実には法的処罰を加えることには困難もあるようだ。実際、景品表示法違反での処分を検討してきた消費者庁は3月28日、同法での処分は難しいという判断を示した。景表法では、実際より著しく優良と誤解される書き込みがあれば、依頼した飲食店側が行政処分対象になるが、そこまで実態と隔たりのある書き込みを頼んだという裏付けはとれなかったということだ。やらせ投稿の横行を防ぐには、口コミサイト側のチェック体制を強化するとともに、行政当局などが、厳しいガイドラインを示すこと、消費者側がやらせ投稿を見抜く目を養うことなどが肝要だろう。


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 久しぶりにフェイスブックを開いてみたら、Trend Microから「プライバシー設定チェッカー」のお知らせが表示された。プライバシー侵害の危険を知らせるメッセージだ。さっそくチェッカーにかけてみたところ、私の投稿がすべて公開されていたり、「友達リクエスト」がだれからも受け取れるように設定されていたりと、プライバシーを犯されるリスクがある設定になっていることがわかった。さっそく、投稿の公開範囲は「友達」までとし、「友達リクエスト」を送信できる範囲を「友達の友達」までとするように、設定を変更した。同じように、Google+の公開範囲にも制限を施した。私の場合には、下のような設定とした。これで、フェイスブックからの迷惑メールが減ることを願っている。

facebook_privacy 一般に、アメリカ発のSNSでは、プライバシーのデフォルトの設定が、「全面公開」状態になっているようだ。プライバシーに関わる情報のだだ漏れを防ぐためには、まずはプライバシー設定の画面を開いて、きめ細かいプライバシー設定をすることが必要だろう。 
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 最近では、各種のブログで、ソーシャルなウェブサービスと連携させるためのボタンを設置できるようになっている。わがLivedoor Blogにもそのような機能があり、その中にPocketに保存するためのボタンも含まれていることを発見。さっそく設置してみました。ブログを「あとから読んでみたい」あるいは「長期保存しておきたい」方は、ぜひご利用ください。ボタンは、各記事の下の並んでいます。
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 最近、私の受け持つ授業の中で、「ソーシャルメディアの利用状況」について、学生に自由記述式で回答してもらったデータがある。このデータをもとに、KH Coderというテキストマイニングソフトを用いて、利用状況の分析をしてみた。

 まず、語彙の出現頻度を調べてみたところ、100語以上の語の出現頻度は次のようになっていた。

語彙の出現頻度

 ソーシャルメディアの中では、Twitterへの言及頻度がもっとも高く、LINEがこれについで高いという結果が得られた。Facebook、mixiがこれに続いている。最近のソーシャルメディアの人気度がよく反映されていると感じた。大学生の場合、mixiには登録しているが、ほとんど使っていない、といった回答が多かった。一般の語彙の中では、「利用」が第一位を占め、「友人」が第三位を占めている。やはり、ソーシャルメディアは、友人との繋がりという位置づけのようだ。

 TwitterとLINEのKWICコンコーダンスをみると、次のようになっている。これは、語彙の前後の文脈がわかるものだ。

TwitterのKWICコンコーダンス

 Twitterについては、フォローしている友人の日常のつぶやきをみたり、自分がいまどこで何をしているかといった他愛もないつぶやきをするのに利用していることがわかる。

LINEのKWICコンコーダンス

 LINEについては、メールよりも早く友人とメッセージのやりとりができること、ゼミやサークルでの連絡によく使われている。回答者は大学一年生だが、大学に入ってから、友人のすすめで始めたという回答が多かった。いわゆるネットワーク外部性のよい例だと思う。LINEは、世界で6000万人、日本国内だけでも2800万人が利用しているといわれ、爆発的なブームになっているようだ。いまや、ソーシャルメディアの中では、Twitterに次いで第二位の地位を占めようとしている。

 次に、階層的クラスター分析にかけてみた。その結果(デンドログラム)は、次の通り。

クラスター分析1

 画面が縦に長すぎて、上半分しか見えていないが、YouTubeが「動画」「共有」「投稿」と結びついていること、LINEが「グループ」「チャット」「便利」などの語彙と結びついていること、Twitterが「友人」「利用」「自分」「見る」などの語彙と結びついていること、などが分かる。それぞれのメディア特性を反映しているようだ。

 デンドログラムの下半分は、次のようになっている。

クラスター分析2

 Facebookとmixiはきわめて近い関係にある。「写真」「登録」「ソーシャルメディア」などとの結びつきが強い。実際、Facebookでは、写真を載せて友人と共有し合うという使われ方が多いようだ。

 最後に、多次元尺度解析によって、出現語彙の2次元空間上の配置状況をみておこう。

多次元尺度解析


 LINEは、従来のメールを代替する機能を果たし、グループ間でのメッセージのやりとりとして、非常に便利なツールとして認識されている。Twitterは、空間的にはやや近い位置にあり、より「情報」に比重をおいたソーシャルメディアであるようだ。YouTubeやFacebook、mixiは、これとはっや離れたところで、独自の機能を果たしているようだ。Twitterは、ある意味で、従来型のSNSであるFacebookやmixiをある程度、機能的に代替しているとも考えられる。

 ※なお、昨年の12月に同じ趣旨で行った内容分析と比較してみると、mixiの凋落ぶりが明らかに見て取れる。

→ http://blog.livedoor.jp/media_research/archives/1731827.html
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 本日の読売オンラインで、次のような報道が、、、
 飲食店の人気ランキングサイト「食ベログ」で業者によるランキング操作があった問題で、質問掲示板「ヤフー知恵袋」でも専門業者が飲食店の依頼で“やらせ投稿”を行っていたことがわかった。不正の横行で、匿名による善意の投稿に支えられる口コミサイトの信頼性が問われそうだ。
 ネット掲示板、とくにYahoo!知恵袋のような「知識共有コミュニティ」では、質問を入れると、即座に適切な回答が返ってくるので、非常に重宝するが、特定のお店や商品に誘導するような、「やらせ」投稿が行われる危険性も少なくない。

 今回のケースでは、次のような手口が明らかになっている。

 「ヤフー知恵袋」にやらせ投稿を依頼していたのは、東証1部上場の商社「JALUX」(東京)が羽田空港内で経営する飲食店。同社によると、昨春、店側が「投稿請負業」を名乗る業者に依頼し、昨年4~7月、4度にわたって「ヤフー知恵袋」にやらせの質問と回答を書き込ませたという。 まず、「羽田空港内でお薦めの店はどこですか」と質問し、「空港で働いているので空港のレストランは詳しいですよ」などと一般回答者を装って「この店が一番いい」などと推奨していた。
 食べログ事件と同じような、請負業者による「やらせ」で、許されざる行為だ。取り締まりを強化することと同時に、ユーザー側のリテラシー向上も求められるといえよう。

出典:『読売オンライン』(1月16日記事)
・「ヤフー知恵袋でもやらせ投稿…揺らぐ信頼性

関連記事(食べログのやらせ投稿問題)
「「食べログ」やらせ書き込み…請負39業者確認
(読売オンライン 1月6日記事)
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 大学1年生に対して、「ソーシャルメディアの利用状況」を含むテーマのレポート課題を提出してもらった(自由記述式)。回収数は118本。これをテキスト化し、「利用状況」の部分だけ抽出し、一つのテキストファイルに統合し、KH Coder(樋口耕一氏開発)を用いて内容分析してみた(※)。
 ※プライバシー保護のため、個人を特定できる情報は、前処理段階ですべて削除してある。

 今回は、パラグラフ単位で出現頻度45以上の語彙を対象として、出現頻度の分布とクラスター分析、多次元尺度解析の結果のみを簡単に報告する。

■語彙の出現頻度

 「利用」という語彙がもっとも多く、「twitter」、「人」、「mixi」がこれに続いている。

 ソーシャルメディア出現回数

■階層型クラスター分析

 上の情報をもとに、クラスター分析にかけてみたところ、次のような結果になった(一部省略)。
 動画共有サイト系が同じクラスターに固まっている。実際の回答をみても、YouTubeとニコニコ動画は、場合によって両方を使い分けている学生が多かったので、これは納得がゆく。

 mixiとtwitterも、きわめて近い関係にある。これも、回答をみると、両方のツールを上手く使い分けている記述が多く、肯けるところだ。「ソーシャルメディア」としての利用と、「情報収集」としてのツールの二種類があるようだ。これに対し、同じSNSでもfacebookは、異なるクラスターを形成しており、「世界」の人々との「交流」にメリットを感じる回答が多かった。これも、グローバルに広がるSNSの特徴を表している、

ソーシャルメディア利用クラスター分析

 ■多次元尺度法による語彙の2次元空間上の分布

 最後に、多次元尺度法を用いて、語彙の関連状況を2次元上に布置してみた。結果は、次のようになっている。中心部付近にmixi、twittr、利用、自分、使う、友達、ソーシャルメディアなどの語彙が分布しており、ソーシャルメディア利用の中核部分を構成しているようだ。同じSNSでもfacebookは、離れた距離にあり、「交流」「世界」「登録」といった語彙と近い関係にある。これと対極的な位置にあるのがYouTube、ニコニコ動画などの動画共有サイトだ。

ソーシャルメディア多次元尺度解析

 今後、さらに細かい分析を続けていきたいと思う。

【関連記事】

大学生のソーシャルメディア利用状況



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 動画共有サイトといえば、ユーチューブが圧倒的に有名だが、他にもたくさんある。主立ったなものをリストアップすると:

Googleビデオ
Dailymotion
MySpace
ニコニコ動画
Veoh
FC2動画
Amebavison
BIGLOBEストリーム
アニメワン
Pndora.tv

 この中では、Googleビデオが検索機能で有用だ。キーワードを入れると、たいていの動画が出てくる。NHKのドラマスペシャル「蝶々さん」を見逃したので、検索にかけたところ、pandora.tvにアップされた動画がヒットした。pandora.tvは、韓国最大の動画共有サイトだという。「蝶々さん」前編は先週の土曜日に放送されたが、早くも、ハングルの字幕付きでpandora.tvにアップされているのだ。画質はあまりよくないが、ストーリーを追うだけなら、これでも十分に楽しめる。
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 2008年、オバマの選挙キャンペーンにおいて、ソーシャルメディアが積極的に活用された。オバマの公式ウェブサイト(BarackObama.com)は、ほとんどSNSといってもいいほど、ソーシャルメディアを駆使したウェブサイトだった。それだけではなく、フェイスブック、マイスペース、ユーチューブなどのソーシャルメディアが徹底的に利用された。

 例えば、オバマの行った主要な演説はほとんどすべて、ユーチューブに投稿された。彼が行った"A More Perfect Union"のスピーチは、2010年8月時点で820万ビューを記録した。ユーチューブの専用チャンネルでは、1850ものビデオが投稿され、計2200万人がこれを視聴した。

 フェイスブックとマイスペースは、とくに若い世代をターゲットとして、組織的なキャンペーン手段として活用された。例えば、フェイスブックでは、オバマを支持する大学生は、「オバマ」と検索するだけで、他の支持者とすぐにつながることができた。オバマの公式アプリを使うと、自分のプロフィールページにこのアプリを追加することができ、、それによって他の支持者やイベントとつながることができた。iPhone用のオバマキャンペーンのアプリも提供された。これを使うと、ユーザーのコンタクトデータがサポーターのキャンペーンへの参加を促進することができた。これによって、キャンペーンメッセージをより多くのサポーターに送ることができるようになり、支持者を増やす上でも有効なツールになった。このiPodアプリ自体、一人のサポーターがボランティアで作成したものだった。

 このようにして、各種のソーシャルメディアをフルに活用することを通じて、サポーターとキャンペーンとの間の双方向的なコミュニケーション環境がつくられたのである。これによって、オバマと彼のチームは、史上初の「メディアポリティクス2.0」を生み出すことに成功したのである。2007~2008年に展開されたオバマのキャンペーンは、21世紀のメディアポリティクスにおけるお手本を提供したということができるだろう。

         (Michael Cheney and Crystal Olsen, "Media Politics 2.0 : An Obama Effect" より抜粋)

参考ユーチューブサイト:
 ・A More Perfect Union Speech
 ・YouTube BarackObama.com ユーチューブのオバマ公式チャンネル

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 木村忠正著「ウィキペディアと日本社会」(アスリーヌ他『ウィキペディア革命』解説記事)に、「ウィキペディアリスク」という興味深い指摘がある。これはACM(アメリカコンピュータ協会)がまとめた、ウィキペディアの記事を信頼することに伴う6つのリスクである:

(1)正確性(どの項目も誤っている可能性が常にある)
(2)動機(記事執筆・編集の意図は多様である)
(3)不確実な専門性(執筆者がどこまで知っているかわからない)
(4)不安定性・変動性(記事がいつ編集されるかわからない、常に悪意ある編集の可能性に曝されている)
(5)対象範囲の偏り(項目が参加者の関心を反映しやすく、全体の組織的体系化がない)
(6)参照源(参照文献・資料言及の少なさ、偏り)

 いずれも、ウィキペディアのもつ問題点であり、現在でも克服されてはいないようである。とくに、日本語版ウィキペディアでは、(5)、(6)が顕著にみられるようだ。木村氏が2007年に、日本語版ウィキペディアで編集回数の多い上位300項目を内容分析したところ、「アニメ、マンガ、ゲーム関連」が24%ともっとも多く、「テレビ番組関連」と「時事的事件事故関連」がそれぞれ14%、「ワイドショー的話題の人物・芸人」が7%というように、内容的にかなりの偏りがみられたという。全体として、マスコミで話題になった事柄が多いようだ。ウィキペディアを参照する場合には、こうしたリスクや問題点、内容の偏りなどに留意することが必要だろう。



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 ウィキペディアは、トリビアルな情報を探すには最適なサイトだろう。例えば、さきほど「11月19日」というキーワードで検索したところ、ウィキペディアの「11月19日」という項目がヒットした。そこには、11月19日に起こった歴史上の有名な出来事が年代別に列挙されていた。そこで発見したのだが、今から42年前の今日は、あのアポロ12号が世界で初めて月に着陸した日だったのだ。世界中がテレビに釘付けになって、感動をもって見守ったあの出来事が、42年前の今日起こったということが、ウィキペディアを通じて発見されたというわけだ。「だから、なんなの?」といわれるかもしれないが、家族や友人との話題の足しにはなるのではないだろうか。こういったウィキペディアの使い方もあるというお話。ちなみに、項目内のリンクをたどると、月面での活動開始時刻は、「1969年11月19日11時32分35秒 UTC」という情報まで記載されている。この項目を作成した人の思い入れが伝わってくるようだ。

 こういったウィキペディア情報のトリビアル性は、旧来の百科事典と大きく性格を異にする点だ。ポケモン(ポケットモンスター)に関する記述が異常に長いといった批判もある(アスリーヌ『ウィキペディア革命』p。85「ポケモンの記事はイマヌエル・カントの記事と同じ長さでよいのだろうか」→これはフランス語版の話)。全体的統一性に欠けるという主張だ。

 ポケモン項目の日本語版は、なぜか「荒らし」のために半保護状態にある。しかし、フランス語版や英語版での記事の長さは、海外でもポケモンが大人気だというグローバルな大衆文化現象を示す一つの指標としては使えるかもしれない。また、アメリカやフランスでは、ポケモンキャラクターの名前やタイプの名前がどのように翻訳されているかも知ることができる。なぜか、フランス語版や英語版の方が、カラー写真がふんだんに取り入れられている。これは、本家である日本としてはちょっと残念であり、さびしい。

 →フランス語版ウィキペディア「ポケモン pokemon」の項目
 →日本語版「ポケモン」の項目
 →英語版「ポケモン」の項目
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 ウィキペディアには3つの基本原則があるという。それは次の3つだ。
(1)中立的な観点
 信頼できる情報源にもとづいて記述すること。とくに論争的なテーマの場合には、賛否両論を併記する、など。
(2)検証可能性
 ウィキペディアに追加された情報が、信頼できる情報源によってすでに公開されていることを検証できること
(3)独自研究は載せない
 書物や学問として確立している情報の要約のみを掲載すること

 それでも、これに反する記事が含まれる可能性はつねにある。とくに問題になるのは、特定の個人を誹謗中傷するような内容、特定の宗教的信条やイデオロギー、偏見を含んだ記事、客観的事実に反する内容の記述、匿名編集に伴う問題などだろう。いくつかの有名な「事件」を例にとって、考察してみよう。

◇シーゲンソーラー事件

 アメリカの著名なジャーナリストであるジョン・シーゲンソーラーが、ウィキペディアの自分に関する記事に、「ケネディ兄弟の暗殺に荷担していた」という虚偽の記載があったとして、2005年11月29日のUSAトゥデイ紙に論説記事を発表した。その後、ウィキペディアは問題の記事部分を削除した。この事件の経緯は、ウィキペディアの「ジョン・シーゲンソーラー ウィキペディア経歴論争」という項目に詳細にわたって記述されている。問題の部分は、次のような内容だった。
「ジョン・シーゲンソーラー・シニアは1960年代はじめ、ロバート・ケネディ司法長官の補佐官だった。一時期、シーゲンソーラーは、ジョンとボビーのケネディ兄弟暗殺に直接関与していたと考えられていた。これに関しては何も立証されていない。」
 この事件の経緯は、ウィキペディアに次のように記述されている。
 2005年9月、シーゲンソーラーは、ウィキペディア英語版に投稿されていた自分の記事に、誤った経歴が記載されているのを発見した。その記事では、シーゲンソーラーがジョン・F・ケネディおよびロバート・ケネディの暗殺事件にかかわっていた可能性が示唆されており、それに加えて、シーゲンソーラーが一時期ソビエト連邦に住んでいたとの記述および、シーゲンソーラーがある広告企業の創業者である旨が記載されていた(実際に広告企業を創業したのは兄のトーマスであり、自身はこの会社には無関係だった)。これらの情報は誤りであったため、2005年10月、シーゲンソーラーはウィキペディアの創始者であるジミー・ウェールズに、記事の是正を要請。これを受けて、記事のうち、誤った情報が記載されていた版が削除されることになった(この削除された版は、現在では管理者にのみ閲覧可能となっている)。誤った記述は、記事が投稿された2005年5月以降、4ヶ月間にわたって放置されていた。また、これらはウィキペディアの管理下には置かれていないいくつかのミラーサイトでは、記事の削除後数週間にわたって、引き続き誤った記事が閲覧可能の状態にあった。〔2011年11月19日閲覧〕
 この事件をきっかけとして、ウィキペディアでは2つの方針を付け加えた。
(1)匿名のIPユーザーには、記事を新規作成する機能を与えないこと
(2)存命中の人物に関しては、否定的なものでも、好意的なものでも、単に疑わしいものでも、出典がない、または出典があいまいで、議論の余地が残る内容は、議論を待たずただちにウィキペディアの記事から削除すること(リー『ウィキペディア・レボリューション』p.358-359より)

 これによって、少なくとも英語版に関する限り、特定個人が名誉毀損を受ける確率は低くなった。日本語版ではどうなのか、不明である。

◇エスジェイEssjayの経歴詐称事件

 これは、ウィキペディアの歴史上もっとも恥ずべきエピソードだといわれている。2005年にEssjayというハンドル名でウィキペディアに登録した人物が、宗教関連の記事を多数編集し、5ヶ月後にはウィキペディアから管理者に指名された。Essjayは、自己紹介のページで、自分はアメリカ東部の私立大学で神学の大学課程および大学院課程を受け持っている。また、神学の博士号、教会法の博士号を持っている」と記述していた。その後、ピューリッツアー賞を受賞したシフという記者が2006年7月号の『ニューヨーカー』誌で、Essjayを取り上げ、「膨大なトピックを監視するウィキペディアの英雄の一人」として称賛する記事を書いた。シフは独自取材にもとづき、Essjayのことを「私立大学の宗教学の終身教授」と伝えた。しかし、こうした経歴はまったくの嘘であることがわかった。Essjayは実はケンタッキールイヴィルに住む24歳の種誌であり、終身教授などではなく、学位ももっていないことを告白したのである(リー『ウィキペディア・レヴォリューション』pp.367-368より)。

 この事件は、2007年2月に、『ニューヨーカー』誌が訂正記事を出したことによって、広く世間に知られるようになった。

 このような経歴詐称は、ウィキペディアの記事内容の信頼性を疑わせる可能性があり、大きな問題となったのである。

→ 詳しい経緯は、ウィキペディアの「Essjay騒動」の項目を参照されたい。また、リー著『ウィキペディア・レヴォリューション』pp.367-368、アスリーヌ著『ウィキペディア革命』pp.54-56にも、この事件に関する記述がある。

◇ネイチャー誌(イギリス)の比較調査

 これは事件という訳ではないが、2005年12月、世界的に有名なイギリスの『ネイチャー』誌が、ウィキペディアの記事がブリタニカ百科事典と遜色のない正確さをもっている、とする調査結果を発表したことから、「ウィキペディアの信頼度の高さ」が評判になったというもの。ネイチャー誌では、ウィキペディア英語版の主として科学分野の42項目について、ブリタニカ百科事典と内容を比較した。審査は項目に関連する専門家が当たったという。調査の結果は、次のようなものだった。

 最終的に、極めて重要な概念に関する一般的な誤解など、深刻な誤りが見つかったものはわずか8件で、それぞれ4件ずつという結果になった。ただし、事実に関する誤記、脱落、あるいは誤解を招く文章はいくつも発見された。Wikipediaにはこのような問題が162件あったのに対し、Britannicaのほうは123件だった。(cnetニュース2005年12月6日より)
 

 このCNETニュースの見出しは、「「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」--Nature誌が調査結果を公表.」となっており、ウィキペディアの正確さを強調するものになっている。世間一般でも、そうした認識がなされるようになった。  しかし、最後の下線部(引用者による)をみると、誤記のカウント数は、ウィキペディアの方がブリタニカより39箇所多い(24%の差)という結果であり、信頼性はブリタニカ百科事典の方が高いという結果になっている。  また、アスリーヌは『ウィキペディア革命』の中で、今回の調査対象項目は、科学分野というウィキペディアにとって最も得意とするところに限定されていた、という問題点を指摘している。もし、歴史、政治、宗教、哲学などに関する項目を取り上げれば、おそらくブリタニカの方がはるかに高い信頼性をもっていると判定されただろう。見出しだけが一人歩きした事例といえる。

◇ウィキペディア記事引用禁止問題

 これは別の記事でも取り上げたが、アメリカのミドルベリー大学史学科で、学生に対しウィキペディア記事を引用することを禁止するという対応をとった、という出来事があった。当時の朝日新聞では次のように報道されている。
 米バーモント州にある名門ミドルベリー大学の史学部が、オンラインで一定の利用者が書き込んだり修正したりできる百科事典「ウィキペディア」を学生がテストやリポートで引用することを認めない措置を1月に決めた。日本史の講義をもつ同大教授がテストでの共通の間違いをたどったところ、ウィキペディア(英語版)の「島原の乱」(1637~38)をめぐる記述にたどり着いたことが措置導入の一つのきっかけになった。(朝日新聞2007年2月23日
 具体的には、次のような経緯があった。
日本史を教えるニール・ウオーターズ教授(61)は昨年12月の学期末テストで、二十数人のクラスで数人が島原の乱について「イエズス会が反乱勢力を支援した」と記述したことに気づいた。「イエズス会が九州でおおっぴらに活動できる状態になかった」と不思議に思って間違いのもとをたどったところ、ウィキペディアの「島原の乱」の項目に行き着いた。
 同大史学部では1月、「学生は自らの提供する情報の正確さに責任をもつべきで、ウィキペディアや同様の情報源を誤りの言い逃れにできない」として引用禁止を通知した。ドン・ワイアット学部長によると、「同様の情報源」とはウェブ上にあって多数の人間が編集することができ、記述の正確さが担保できない情報源を指すという。(同記事より)

 しかし、こうした引用禁止措置は他の学部では広がらず、他の大学でもこうした引用禁止措置を行う大学があるという報道はその後なされていない。この事例も、ウィキペディアに関する極端な反応の一つであり、一般化することはできない。現時点では、引用する場合には、「閲覧時点」を明記し、引用部分であることがわかるような記述にする、という指導が多くの大学では行われていると思われる。また、出典先(島原の乱の場合には、神田千里著『島原の乱』中央公論新社など)をあたって、正確さ、信頼性を確認することを勧めるという指導法が多くとられているように思われる。

◇記事の当事者による編集

 自分のことについてウィキペディアで書かれたことについて、当事者が都合の悪い部分や誤った記述などを編集して内容を改変する、という行為はこれまでに頻繁に起きている。とくに、企業、行政機関、有名人などの記事で多く発生している。山本まさき著『ウィキペディアで何が起こっているのか』には、そうした事例がいくつか紹介されている。ここでは、内容には立ち入らず、箇条書き式に列挙しておきたい。

・楽天証券の当事者編集事件(2006年)
・「西和彦」ページの大幅削除事件(2006年)
・ウィキペディア創設者ジミー・ウェールズ氏による自身の記事編集(2005年)
・省庁によるウィキペディア編集事件(2007年)

◇特定個人、企業などに対する中傷誹謗、名誉毀損事件

・ファッションモデルに対する誹謗中傷事件(2008年)
・声優ページに対する荒らし(2008年)
・ソニーとマイクロソフトの間の編集合戦(2006~2007年)

 この数年間だけでも、これだけの事件(問題)が起きている。最近の事例はどうなっているのだろうか?
この点は不明だ。
 

 
 

 
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J.Palfrey and U.Gasser, 2008, Born Digital: Understanding the First Generation of Digital Natives.
born-digital
 きょう入手した本。『生まれながらのデジタル:デジタルネイティブ第一世代を理解する』
 この本では、1980年以降に生まれた世代を「デジタルネイティブ」と呼んでいる。彼らは、デジタル技術を縦横に使いこなす新世代だ。彼らの行動は、それまでの世代とまったく異なっている。彼らは新聞を読まずに、ブログを読む。彼らは現実に知り合う前に、オンラインで知り合いになる。彼らはレコード店でCDを買うのではなく、オンラインで音楽を購入する。待ち合わせをケータイでする。ライフライフがこれまでの世代と異なっているのだ。

 情報という視点からみると、1980年代からのデジタル技術革命は、歴史上最大の革命的な出来事だ。

 1980年以前に生まれた人は、伝統的なアナログメディアとともに育った。彼らは人生の途中からデジタル技術に触れた世代だ。それに対し、デジタルネイティブは、生まれたときからデジタル技術があった。だから、ライフスタイル、人間関係がそれまでの世代とは決定的に違っているのだ。彼らの生活の中で、オンラインとオフラインの境界がなく、相互が融合している。また、オンラインでいる時間が長い。彼らは、24時間、友達とつながっている。

 デジタルネイティブは、きわめて創造的でもある。彼らはマイスペースで自分のプロフィールを自由にい設定したり、ウィキペディアの項目を編集したち、オンラインビデオを制作したりすることができる。彼らは新しいソフトウェアをあっという間に使いこなせるようになる。

 本書の目次は、次のようになっている:

第1章 アイデンティティ
第2章 デジタル書類
第3章 プライバシー
第4章 安全性
第5章 創造者
第6章 海賊
第7章 クオリティ
第8章 情報過剰
第9章 侵略者
第10章 イノベーター
第11章 学習者
第12章 活動家
第13章 総括

 全体的に読みやすい、平易な英文だが、なにしろ350頁以上あるので、少しずつ読み進めていきたいと思う。
ただ、この本には、図表のたぐいがまったくない。文章だけの本。また、文献リストも少ない。したがって、専門書というよりも、デジタルネイティブを子供にもつ親たちに、「デジタルネイティブ」とはこういう世代だということを啓蒙するための読み物という感じがする。

 ドン・タプスコット『デジタルネイティブが世界を変える』とどこが違うのか、いまいちはっきりしない。
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 手元に、ウィキペディアに関する本が3冊ある。

山本まさき・古田雄介『ウィキペディアで何が起こっているのか』オーム社〔2008年〕
ピエール・アスリーヌ他『ウィキペディア革命:そこで何が起きているのか?』〔2008年〕
アンドリュー・リー『ウィキペディア・レボリューション』(2009年)

 いずれも、ほぼ同時期に発売されているので、内容にはかなりのだぶりがみられる。ウィキペディアに対しては、擁護的な見方と批判的な見方が分かれている。3冊目の本は、もっとも好意的に記述されているようだ。これに対し、前2作は問題点も多く指摘されている。最初の本は、ウィキペディア日本語版が主に扱われている。過去の主要な事件などの事例が詳しい。二番目の本は、フランスのジャーナリストが書いたもの。三番目は、中国のインターネット専門家が書いたもの。

 ウィキペディアの入門的内容や構成、運営方法、問題となった事例、ウィキペディアンに対するインタビューなどは、最初の本が詳しい。ウィキペディアに対する批判的見解を知りたければ、二番目の本がよいだろう。ウィキペディア誕生までのいきさつ、ウィキペディア創設者のエピソードを知るには、三番目の本が詳しい。

 この3冊を読んでも、ウィキペディアをどう評価すべきかは分からない点が多い。最近は、英語版など、収録されている項目が膨大になり、これ以上の進化は望めないという悲観論もある。日本語版は、匿名性の問題、組織上の問題などがあるようだ。今後、コンテンツの質的な向上をどうはかるかが、ウィキペディアに課せられた最大の課題といえるだろう。また、財政的な基盤が脆弱という問題も指摘されており、安定した財源の確保も大きな課題だろう。利用する側からみると、ウィキペディア利用リテラシーといった能力を涵養することも重要だ、と改めて感じた。
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武田隆著『ソーシャルメディア進化論』〔2011〕ダイヤモンド社

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 先週、この本を入手したので、さっそく読んでみた。前半はインターネットの歴史とソーシャルメディアの特徴について書かれている。後半は、「企業コミュニティ」サイトに特化し、著者自身の経験をもとに、豊富な事例を交えての、一種のサクセスストーリーが書かれている。

 本書で一番参考になったのは、「ソーシャルメディアの4象限」の図だろうか。
ソーシャルメディアの4象限
(武田隆『ソーシャルメディア進化論』p.90より)

  縦軸には、「現実生活」を拠りどころにするソーシャルメディア対「価値観」を拠りどころにするソーシャルメディアが対極的に描かれている。「現実生活」型ソーシャルメディアでは、実名性が高くなり、現実生活の範囲の人間関係でのつながりが強くなっている。これに対し、「価値観」を拠りどころにするソーシャルメディアでは、匿名性が高くなり、趣味や想い、価値観を通してつながる傾向がみられる。

 横軸には、「情報交換」を求めるソーシャルメディア対「関係構築」を求めるソーシャルメディアという両極が描かれる。「情報交換」型のソーシャルメディアは、規模が大きく、重複を排除する特徴があり、集合知を生成する。これに対し、「関係構築」型ソーシャルメディアでは、規模は20人前後、中心となるリーダーの数だけ重複を許す特徴があり、親密な思いやり空間を生成するという。

 各種のソーシャルメディア具体例は、上の図のように配置されている。それぞれのソーシャルメディアには、以上4つの特徴が多少なりとも含まれているので、かならずしも各象限にフィットするとは限らないと思うが、傾向としては概ね当たっているように思われる。ブログやツイッターの位置づけは、これでいいのか、若干疑問も感じるが、大勢はこんなものだろうか、、、。勉強になりました。

 詳しい内容紹介は、こちらのサイトで → ソーシャルメディア進化論
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 何か言葉の意味などを調べたいと思って、ググると、ほとんどの場合、ウィキペディアのサイトへのリンクが表示される。それほど、ウィキペディアは大勢の人によって利用されているのだろうか?グーグルの場合、サイトへのリンク数を基本にランキングが設定されているらしい。その理由の一つは、ウィキペディアへの内部リンク、外部リンクが多いということがあげられる。

 そうなると、言葉の意味を探索する人にとって、ウィキペディアをまず参照するのが第一ステップになる。しかる後に、もっと信頼できそうな情報源や文献を探すというのが、ふつうのユーザーのやり方だ。英語版では、記事の最後に情報ソースのリンクが多数張られている場合が多い。それをたどって、より正確で深い内容の情報に行き着くことが多い。英語版ならば、それが一番賢いやり方だ。しかし、日本語版の場合、英語版に比べると、引用先のリンクの数が少ないという問題がある。また、本文の記事が、引用した文献の内容と食い違っている場合も少なくないようなので、注意が必要だ。

例:「デジタルネイティブ」という言葉の意味を調べようと、ウィキペディアに当たってみると、やはり、真っ先に日本語版ウィキペディアが登場する。そこで、クリックしてみると、わずか10行程度の説明があるだけで、お粗末なコンテンツとなっている。しかも、この記事は「書きかけ項目」になっている。「名称の由来」「特徴」が数行あるだけで、情報源としてはほとんど役に立たない。「名称の由来」は、次にように記されている:

ガートナーのPeter Sondergaardが名付けた名称であり、生まれながらにITに親しんでいる世代をデジタルネイティブ、IT普及以前に生まれてITを身につけようとしている世代をデジタルイミグラントと呼んだ
 これは明らかに間違いだ。「ガートナーのPeter Sondergaardが名付けた」というのは誤りで、正しくは、「2001年、アメリカの作家、マーク・プレンスキーが名付けた」とするのが正しい。事実、このウィキペディア記述の最後に列挙されている関連文献の一つ、NHK「デジタルネイティブ」の中で、正しい記述がある。どうやら、このウィキペディア項目の執筆者は、この本を実際には読んでいないらしい。  これに対し、英語版のWikipediaのDigital Nativeに関する記述は、はるかに詳しく正確な記述となっている。名称の由来については、次のように記述されている:
Marc Prensky coined the term digital native in his work Digital Natives, Digital Immigrants published in 2001. In his seminal article, he assigns it to a new group of students enrolling in educational establishments.[1] The term draws an analogy to a country's natives, for whom the local religion, language, and folkways are natural and indigenous, compared with immigrants to a country who often are expected to adapt and begin to adopt the region's customs.
(訳)マーク・プレンスキーは、2001年に出版された「デジタルネイティブ、デジタルイミグラント」の中でデジタルネイティブという言葉をつくった。(以下、省略)

 こうしてみると、ウィキペディアで「書きかけ項目」となっていたら、注意することが必要だろう。
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 電通がソーシャルメディアのアクティブユーザ(15歳~37歳〕を対象に実施した調査の結果が公表されている。対象者のうち、ソーシャルメディア上の友人を100人以上もっていると回答したのは、14%〔800名〕だった。この「SNS100友」ユーザについては、平均友達数が256人にも上っていた。半端な数字ではない。彼らは平均して12のコミュニティを持っており、「自分の発信した情報は、つながっている友達がさらに情報を引用・拡散することで、最大2825人に及ぶ」と推計されている。SNS上の口コミネットワークの巨大さが伺える。

 また、ソーシャルメディア上でつきあいのあるコミュニティの第1位は「趣味つながり」65%でもっとも多く、これについで「学校」54%、「地元や家族」40%などとなっている。つながりの内訳をみると、「音楽」が59%ともっとも多く、「マンガ・アニメ」34%、「スポーツ」28%などがこれに続く。やはり、エンタメ関連のつながりが多いようだ。

  (ツイッターなど)ミニブログの利用動向をみると、「94%が他人の発言を引用(RTなど)。しかも、自分のコメントをつけずにそのまま引用する割合が6割」という調査結果。「情報を回し合って共有することが友達との絆になっている」と分析している。東日本大震災でも、こうした共有行動が活発にみられたことは記憶に新しいところだ。

 興味深い最新調査データだと思う。

→ 電通News Release〔2011年11月2日〕

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