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メディアとコンテンツをめぐる雑感と考察

カテゴリ: ソーシャルメディア

宮田加久子著『きずなをつなぐメディア-ネット時代の社会関係資本』NTT出版〔2005〕
(レビュー)

 本書は、ソーシャルネットワーク論ないし社会心理学の視点から社会関係資本を分析したものである。この立場からみると、社会関係資本は「個人間や組織間のネットワークに埋め込まれた資源」とみなされる。同じ立場から社会関係資本を分析した研究者として、ナン・リン(Nan Lin)があげられている。彼によると、社会関係資本には、①社会構造に埋め込まれた資源(構造的側面)、②個人による資源へのアクセス可能な社会的ネットワークを持つこと(機会的側面)、③目的を持った行動における個人による資源の利活用(行動志向的側面)という3つの要素が含まれている。②は①によって規定され、③は②によって規定されるという関係がある。


 本書では、社会関係資本を「信頼や互酬性の規範が成り立っている網の目状の社会ネットワークとそこに埋め込まれた社会的資源」と定義している。この定義には、3つのキー概念が含まれている。第一に「社会ネットワーク」(人、集団などの相互間で形成される網の目状の関係性の広がりの総体)、第二に「信頼」(特定他者に対する個別的信頼と一般他者に対する一般的信頼からなる)、第三に「互酬性の規範」(一般化された互酬性と、何かをしてくれた人にお礼をする特定的互酬性からなる)である。


 本書では、①インターネット(とくにオンラインコミュニティ)への参加が社会関係資本の形成にどのような影響を及ぼしているのか(第2章)、②オンラインコミュニティにおいてどのような資源が提供されているのか、とくに橋渡し型の社会関係資本の特徴である一般化された互酬性の規範と信頼がどのように形成されているのか(第3章)、③インターネットで補完される社会関係資本の効果(個人レベルでは精神的健康と消費者行動、社会レベルでは市民参加とエンパワーメント)はどのようなものか、意図せざる負の効果としてのデジタルデバイド(社会関係資本の格差拡大)の可能性はどうか(第4章)、が先行研究のレビューと独自調査研究を通して詳しく検討されている。それぞれについて、簡単に紹介しておきたい。


<インターネットでつながるきずな>


 インターネットの利用と対人関係の関連についての従来の研究をレビューしてみると、「インターネットの利用が対人的接触を減じ、社会ネットワークを縮小・弱体化する」という結果と、「対人的接触を増大させ社会ネットワークを維持・補完する」という相反する知見がみられる。このうち、前者の研究では、その理由として、①インターネット利用が他の活動時間と競合するため、インターネット利用が他のソーシャルな活動を代替している、②インターネットではソーシャルなサポートが得られにくいため、電話など他メディアでの相互作用を阻害する場合には既存の社会ネットワークの紐帯が希薄化し、また強い紐帯を築きにくい。逆にフレーミングなど社会ネットワークを阻害する恐れもある、③インターネット利用がストレスとなって、それが人々を抑圧して相互作用から遠ざけ、対面的接触の減少によって抑鬱と孤独感が高まる、などが指摘されている。しかし、これらの先行研究にはいくつかの問題点があると著者は考える。そこで、本書では、社会ネットワークの形成と関わりの深いインターネットサービスとして、「交流型」(電子メール)と「コミュニティ型」(オンラインコミュニティ)に注目し、社会ネットワーク形成との関わりについて実証的に検討を加えている。


 まず、電子メールについてみると、電子メールは遠く離れたネットワークを維持する反面、身近なネットワークを縮小させるかもしれない、という知見が得られている。PCメールと携帯メールの利用度と社会ネットワークとの関連をみると、「電子メールであっても、PCメール送信数は社会ネットワークの規模や多様性と、携帯メール送信数は強い紐帯の数と関連があることがわかった」という。結論として、「少なくともPCメールの利用が弱い紐帯も含めたネットワークの規模や多様性を維持するのに役立っていることが明らかである。それに対して、携帯メールは近くにいてサポートを提供してくれるような強い紐帯をつなげる役割を果たしていることが推測される」としている。これは納得のいく知見である。


 次に、オンラインコミュニティについてみよう。ここでオンラインコミュニティとは、「旅行、スポーツ、地球環境、ゲーム、仕事、健康管理などのように、利用者が共通の関心テーマのもとに集い、コミュニケーションする社会空間(場)であり、その場では利用者が自主的に参加し相互作用し、意見交換や議論を行っている」と定義されている。具体的なサービスとしては、電子掲示板、メーリングリスト、チャット、ブログ、オンラインゲーム、SNSなどがある。著者は、オンラインコミュニティの中の社会ネットワークについて、①「開放性」という構造的次元、②「紐帯の強さ」という関係性の次元、の両面から検討を加えている。


 オンラインコミュニティにおける社会ネットワークの開放性とは、新規参加者によってネットワークが新しく追加され拡大していくことを意味している。各種調査の知見によれば、「インターネット利用者のなかでも、オンラインコミュニティで社会ネットワークを形成している人の割合は低いものの、その新しい友人・知人への評価から考えて、価値観等を共有できる人々の間で弱い紐帯を作るのにオンラインコミュニティが役立っていることがわかる」という。また、オンラインコミュニティ形成のプロセスをみると、「オンラインコミュニティは、全体として文字表現の工夫をしながら、自己開示をすることで参加者のアイデンティティを形成し、さらにはコミュニティ固有のアイデンティティの形成を通じて幅広い社会ネットワークを作り上げ、その間で望ましい社会的雰囲気を維持するための規範を創造していく」という。社会ネットワーク形成を左右する個人的要因についても検討がなされている。それによると、若年層ではインターネットで新しいネットワークを形成する可能性が高いこと、外向的な性格の人ほど、対人関係形成に積極的でかつそのスキルも高いので、オンラインコミュニティを通じて社会ネットワークを形成しやすい、などの知見が紹介されている。その結果、「社会性の高い人々については、オンラインコミュニティで書き込みを行うほど新規のネットワークが形成され、それが日常生活空間での豊かな社会ネットワークに追加されるので、オンラインコミュニティに積極的に参加するほど全体のネットワークが拡大するという現象がみられる。それに対して、社会性の低い人々は、オンラインコミュニティでの書き込みが多いほど、日常生活空間では形成されにくかったネットワークを形成できるので、オンラインコミュニティへの参加が社会ネットワークを補完するという現象がみられる」と述べている。


 紐帯の強さという点をみると、オンライン上でのネットワークは基本的には弱い紐帯だが、これを強い紐帯に変えていく場合もある。第一に、接触時間が長いほど親しい関係になるという傾向がある。第二に、自己開示が増加すると紐帯が強化され、道具的課題志向的な関係から友人関係へと変化する傾向がみられる。第三に、オフ会などの対面的コミュニケーションを利用するなど、メディアの複合的利用が強まるほど、紐帯は強いものになる。オンラインコミュニティでは、参加者が相互作用を繰り返すうちに、互いに強い紐帯を形成し、参加者の同質性が高まるという傾向がみられる。この同質化傾向は、コミュニケーションを促進するというプラスの効果と同時に、排他的になるというマイナスの効果も内包している。


<オンラインでの互酬性の規範と信頼の形成>


 この章では、オンラインコミュニティの中で共通の目標をめざす自発的協力がどのように行われているか、互酬性の規範は協力の促進にどのような影響を持っているかを検討している。また、その過程でオンラインコミュニティの参加者やそこに埋め込まれている資源が信頼できるかを参加者がどのように判断し、信頼がどのように醸成されているかを分析している。また、このようなオンライン上の互酬性の規範や信頼が日常生活空間に拡大する可能性と限界についても論じている。


 オンラインコミュニティでは、社会的ジレンマ(全員協力が最善策とわかりながら、結果として全員非協力になるという事態)が、「ただ乗り」という形で生じやすい。こうした社会的ジレンマを防ぐ要因として、著者は①一般化された互酬性への期待、②オンラインコミュニティへの愛着や関与、③他者への共感的関心、④アイデンティティの表出、⑤自己効力感、⑥コンサマトリー性の動機づけをあげている。このうち、社会関係資本と関連が深いのは、①の「一般化された互酬性への期待」(パットナムのいう橋渡し型の社会関係資本)である。具体的な事例として、著者は「消費者間のオンラインコミュニティ」と「オンライン・セルフヘルプグループ」について、検討している。消費者間オンラインコミュニティでは、「書き込みを通じて他の人と情報を共有したことで自分も得をするから」という回答が約半数あり、全体として一般化された互酬性の規範意識が浸透していることがわかった。オンライン・セルフヘルプグループ(ここでは育児サポートのSHG)参加者への調査が行われている。ここでも、「依然このフォーラムのメンバーが私にサポートを与えてくれたので今度は私が役立ちたいと思うから」と答えた人が約半数と多く、オンラインコミュニティ内部での一般化された互酬性の規範意識が高いことが示された。


 次に、オンラインコミュニティにおける信頼の特質と形成についての検討に入る。ここで著者は、信頼に関する先行研究の成果を整理した上で、オンラインコミュニティでの信頼について、オンラインコミュニティに参加する特定個人が信頼できるかどうか、という「特定的信頼」、ある特定のオンラインコミュニティに参加している人々が信頼できるかどうかという「カテゴリー的信頼」、人間一般を信頼するという「一般的信頼」に分けた上で、それぞれの信頼がオンライン空間でどのように判断、形成されるかを検討している。そこには、①特定の参加者間でのコミュニケーションを繰り返すことを通じて相互信頼の期待を形成する、というコミットメント形成による方法と、②特定他者や特定のオンラインコミュニティについての情報を集めて、それに基づいて信頼するかどうかを判断する、という情報を利用する方法のふたつがある、と著者は指摘している。オンラインコミュニティにおいて「信頼」が重要なのは、「インターネット上では、一般的な信頼を形成することによって、個人にとっては従来にない利益が得られる機会を増やし、集団では協力行動を促進し、社会においては効率化を進めることができる」からである。その意味で、オンラインコミュニティにおける「評判」システムは、信頼を判断し、形成する上で重要な役割を果たしている。評判という情報に基づいて他者の信頼性を判断しているコミュニティでは、橋渡し型の社会関係資本が形成されやすい。そこでは、「ネットワーク内部にある特定個人の実績についての評判情報が豊富に循環していて、それに容易に接することができると、その特定個人に対する期待を発展させ、それが信頼を形成するというメカニズムが働く」という。それが橋渡し型の社会関係資本を形成するのである。

 こうしたオンラインコミュニティ上での社会関係資本形成は、日常生活での一般的信頼度や社会関係資本にも貢献するだろうか?著者が山梨県で実施した調査によると、オンラインコミュニティに書き込みをする人ほど一般的信頼が高いという傾向が見出された。また、子育て支援オンラインコミュニティへの参加者への調査によると、オンラインコミュニティでサポートを受けた経験が、日常生活空間での他者に対するサポートの提供を促すという結果が得られたという。

<社会関係資本が変える暮らし、地域、社会>


 著者は最後に、オンラインコミュニティにおける社会関係資本の形成が、人々の暮らしや社会に及ぼす効果、影響について検討を加えている。ここでは焦点を絞って、肯定的な効果として、参加者個人の精神的健康(ミクロレベル)とエンパワーメントへの効果(マクロレベル)、および否定的な効果として、社会関係資本の悪用とデジタルデバイドの拡大について検討されている。

 オンラインSHGコミュニティに関する調査では、次の3つの点が明らかになったという。すなわち、①オンラインとオフラインのサポートが相互作用的に精神的健康を促進するという効果がみられた。②オンラインSHGからのサポートの受領は自尊心や家族関係満足度には効果があるが、直接抑鬱を抑制する、低減するという効果は低く、その効果は限定的であった。③オンラインSHGへの関与によってオンライン・サポートの受領の効果は異なっていた。オンラインSHGで社会関係資本を活用してサポートを受けることが精神的健康を増進することが確かめられたが、その理由として著者は、①オンラインコミュニティへの参加を通じてコミュニティ意識が醸成され、孤独感が低減されること、②とくに他の人に打ち明けにくいスティグマを抱えている人は、オンラインコミュニティ上での自己開示によってストレスが低減されること、③グループ内で手本になる人を見つけ出し、その人の考え方や行動を模倣することにより、参加への動機づけを高めたり、問題への対処法を学ぶこと、をあげている。ただし、オンラインSHGに限らず、一般のオンラインコミュニティを含めて、知らない人から受けるサポートの有効性には限界と問題点があることも指摘されている。

 次に、社会関係資本のマクロレベルの効果として、エンパワーメントが取り上げられている。エンパワーメントとは、著者によれば、「パワーを持たない人々が力をつけて連帯して行動することによって自分たちで自分たちの状態・地位を変えていこうとする、きわめて自立的な行動」のことである。具体的な実証例として、ここでは消費者間オンラインコミュニティおよびオンラインSHGでのエンパワーメントが取り上げられている。消費者間オンラインCMの事例としては、「東芝事件」が取り上げられている。オンラインSHGでは乳がん患者のオンラインSHGが分析されている。

 最後に、社会関係資本の意図せざる負の効果についても検討されている。具体的には、①結束型社会関係資本の悪用(自殺掲示板の利用など、反社会的な目的で利用されるケース)、②結束型社会関係資本の持つ負の効果(部外者の排除、ただ乗り、個人の自由の束縛など)、③新たなデジタルデバイドの発生(インターネットを利用して社会関係資本を活用できる人々はますます豊かな社会関係資本を築き、利用できない人々との間の格差が拡大するという悪循環)などがある。


<社会関係資本の豊かなインターネット社会を目指して>


 最後の章で、著者は、社会関係資本を豊かにするための提案を行っている。それは、「メディア・リテラシー育成の必要性」(メディア評価能力、メディア表現能力、メディア利用スキルの涵養)、「水平なネットワーク構造を持つ集団の必要性」(人々の自発的な参加によって成り立っている水平な社会ネットワーク構造を持つ集団の形成と維持)、「制度や技術の必要性」(政府や自治体でインターネットの社会関係資本涵養機能と効果を理解した上で、それを促進するための支援制度づくり、P2Pなどの新しい技術の開発)、の3つである。そして最後に、「今後、ますますインターネットは広い範囲に普及し、さらにその技術も進歩すると思われるが、公共性を高めるための社会関係資本をどのようにインターネットが支援していくことができるのかという視点を持ち続けることの重要性」を指摘している。


 以上が本書の概要である。社会関係資本という概念を手がかりとして、インターネットとりわけオンラインコミュニティ(現在でいうソーシャルメディア)が人々をつなぐメディアとして、どのようにして豊かな社会を築いてゆくかを、膨大な文献と調査分析を通して論じた、読み応えのある力作である。社会関係資本とインターネットの関係に興味を持たれる方は、パットナムの『孤独なボウリング』、ナン・リンの『ソーシャル・キャピタル』とともに、ぜひ本書を手にとって、詳しい内容をご覧いただきたいと思う。


 → 『きずなをつなぐメディア-ネット時代の社会関係資本』

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Facebookといえば、いま一番人気のあるソーシャルメディアですが、将来も発展を続けるのでしょうか。それとも、2000年にタイムワーナーと合併したあと、凋落したAOL、あるいは、2005年にニュースコーポレーションに買収されたMySpaceのように、伸び悩んで利用者を大きく減らしたのと同じ運命をたどるのか、それは誰にもよそくできないでしょう。日本のマーケットでは、いまのところ、まだ十分受け入れられてはいないようです。CNNの特集記事は、発展に翳りが見えるとかいています。
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 私にとって、今年は「クラウド元年」になりそう。昨年の年末は、どのクラウドを使ったらいいか、わかりませんでした。一端、mobileme(idisk)にフリートライアルしましたが、利用料金が1ヶ月900円もすることが嫌になって、解約しました。

 フリーソフトで、簡単操作で、インターネット上に各種データを共有できるサービスとして、dropboxに注目しています。

 使い方は非常に簡単です。PCとiPadの両方に、dropboxをインストールしておくと、まるでPC内でファイルコピーしたり、開けるように、快適なクラウド環境ができます。所用時間わずか30分でした。之は本当にお勧めのクラウドです。無料でも、2ギガの容量を使えます。iDiskの場合、20ギガでしたが、当分の間は、2ギガでも十分でしょう。

 クラウドについては、これからも随時研究を重ねるつもりです。
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The Obama Effect: Multidisciplinary Renderings of the 2008 Campaign

 「メディアと政治」(特にアメリカの最新事情)に関心のある方にとっては必読書でしょう。「オバマ効果」(The Obama Efffect)というタイトルの本。最近出たばかりのようです(2010年9月20日発売)。オンライン版で15ドルでした。


The Obama Effect: Multidisciplinary Renderings of the 2008 Campaign とくに、第二部は、"New Media"という表題で、ニューメディアを活用したオバマ氏の大統領選挙キャンペーン(2008年)について、詳しく解説しています。iPadでじっくり読み進めていきたいと思います。
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mark zuckerberg やはり、今年の顔は、Social Neworkingだったようです。Zuckerberg氏は、わずか26歳という若さ。facebookの最高責任者(COE)です。ハーバード大学在学中に、SNSであるfacebookを開発。2010年夏には、世界中で5億人もの人びとがアクティブに利用する、ソーシャルメディアの王者となっています。

 日本では、あまり普及していませんが、アメリカやカナダでは、半数前後の国民gfacebookを使うようになっているといいます。

日本では、ミクシイやグリーなどのsnsが大きなシェアを誇っていますが、FACEBOOKの本格的な日本上陸が目前に迫っているようです。私自身は、昨年の7月に加入しましたが、いまは休止しています。



Time誌といえば、週刊誌の部門で、マルチメディアをフルに活用した、画期的な電子雑誌を発行しています、テキストと写真だけの構成から、YoTube、ウェブサイトへのリンクなどをフルに活用した、ハイエンドのつくりになっています、日本では600円という定価がつけられています。今回は年末の特別号ということで、iPadで購入しました。記念に長く保存しておくつもりです。広告にはすべて、動画とウェブサイトへのリンクがつけられていて、まるでテレビのCMをプルで見ているといった感じです。雑誌とテレビが融合したメディアといえるでしょうか。雑誌の編集も、従来のものとはかなり違っています、1ページの記事が、従来のA4版にこだわらず、プルダウンで、下に長々と続くのも、読みやすくて好感がもてます。また美しいカラー写真が満載されているのも、従来の雑誌に比べてメリットといえるでしょう。

 ただ一つの難点をいえば、分からない単語の意味が、本文では表示されないということです、ウェブ版では、単語にカーソルをあてると、意味が日本語で表示されるので、電子雑誌版でも、海外読者のために、こうした機能を追加してほしいものです。

 また、日本の電子雑誌は、いまのところ、紙の媒体をそのままデジタル化しただけにとどまっています。ぜひ、TIME誌にならって、より高度なフォーマットの雑誌をつくっていただきたいと思います。雑誌の生き残りをかけるためにも、、、、。
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IPadには、 ワープロ機能は付いていませんでした。そこで、AppStoreで探した結果、iText Padというナイスなテキストエディターをみつけました。
このソフトのいい点は、作成した文章を保存できるだけではなく、ただちにメールで送信できることです。
外出先で作成した文書、原稿なども、WiFi環境にあれば、すぐに送信できます。もちろん、メールソフトを立ち上げて送信してもいいのですが、iText Padだと、文書に名前をつけて保存しておくことができるのです。
また、テキスト全体を選択し、全文をコピーし、Blogの投稿欄にペーストするなど、他のアプリとの連携がスムーズに行えます。これで、iPadは、ますます便利になりました。まさに魔法の情報端末ですね。
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 きのう紹介しようと思った、”Socialnomics”ですが、調べてみると、日本語訳はいち早く出版されていました。タイトルは、『つぶやき進化論-「140字がGoogleを超える!』というものです。

つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)
著者:エリック クォルマン
イースト・プレス(2010-07-29)

原書の表題とあまりにもかけ離れたイメージのする邦訳書名は、あまり頂けませんね。私自身は、きのう原書を入手したばかりで論評することはできませんが、通読したら、(原書の)書評の形で公開したいと思っています。

 負け惜しみをいうわけではありませんが、原書のiPad版は、11ドル(1000円弱)でした。アマゾンで現物版の価格をみると、なんと2200円となっています。これに対し、日本語訳版は1575円です。ということで、iPad版の価格が一番安く設定されていました。iPadで買ってよかった、と一安心!

 iPad版のいいところは、値段が安いだけではありません。辞書機能がついていて、分からない単語の意味はワンクリックで表示されるのは、とても便利です。随所にあるインターネットサイトへのリンクも、ワンタッチで被引用サイトへジャンプできます。これもたいへん便利。重要だと思った箇所には、黄色のマーカーをつけられます。現物と違って、あとでマーカーを消去するのも簡単。いったん読み終わっても、再度立ち上げると、よみかけのページをすぐに開いてくれること、注釈の番号をクリックすると、注釈をすぐに表示し、また「戻る」ボタンで本文に戻ることができること、、、など、圧倒的な使い勝手の良さが光ります。

 これからの出版は、オンライン版抜きには語れないでしょう。紙版とオンライン版を両方同時に行う出版が普通になる時代が、もうすぐそこまで来ている、という実感を受けました。

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Socialnomics: How Social Media Transforms the Way We Live and Do BusinessSocialnomics: How Social Media Transforms the Way We Live and Do Business
著者:Erik Qualman
Wiley(2009-08-24)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
 アマゾンで、このような本を見つけました。4ヶ月前に発売されたばかりの本です。次のブログで内容を紹介したいと思います とりあえず、筆者からのDigital Christmasグリーティングをご覧ください。

Digital Christmas Video

 日本語訳も出るようですね。早い!追いつけない!

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 Facebookは、いうまでもなく、世界最大のSNSです。けれども、それがカバーするのは、世界全体ではないようです。アメリカとヨーロッパには、きわめて緊密なネットワークが張り巡らされていますが、中国はすっぽりと抜け落ちています。日本でも、東京や大阪などの大都市にかたよっているようです(CNNのニュースサイトより)
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 今回ご紹介するのは、三浦麻子さんと川浦康至さんの共著「人はなぜ知識共有コミュニティに参加するのか」という論文です。折田さんとは違って、知識共有コミュニティを次の2つに分けています。
(1)ウィキペディアのように、扱われる内容が狭義の情報(いわゆる知識)のみの百科事典型コミュニティ
(2)利用者の情報ニーズが「質問」という形で顕在化し、他の利用者がそれに対する「回答」を投稿する、Q&A型コミュニティ

 本論文が対象としているのは、(2)のQ&Aコミュニティです。具体的には、Yahoo!知恵袋の利用者に対して、質問者用質問紙(Q版)と回答者用質問紙(A版)の2種類を用意し、ウェブ上で調査を行っています。調査の概要は次のとおりです。

調査期間:2005年12月16日~20日
調査対象:上記期間中に知恵袋にログインし、質問か回答のいずれかを投稿した利用者。
有効回答:Q版5562人、A版2513人
回答者属性:男性50.3%、女性49.7%、平均年齢31.4歳


調査の結果

コミュニティへの参加状況とスタイル
 質問投稿数、回答投稿数を比較すると、平均値は質問投稿よりも回答投稿の方が多い。質問1件あたり平均3.6件の回答が寄せられています。この数値をもとに、三浦さんらは、コミュニティ参加スタイルを次の4群に分けているます。
①質問投稿のみ
②質問と回答の両方、かつ質問>=回答(質問優位)
③両方投稿、かつ、回答>=質問(回答優位)
④回答投稿のみ
4群中いちばん多かったのは①で、平均投稿数は2.7件。他方、「回答投稿のみ」群の平均回答投稿数は137.47と非常に多くなっています。コミュニティに対する関与度の高い人びとだと考えられます。

質問投稿動機:
 調査では、9つの動機を提示し、回答を得ています。これを因子分析した結果は、次のようになっています。
Q&Aコミュニティ質問動機の因子分析
                         (出典:三浦・川浦, p.238)

 「社会的動機」「外発的動機」「内発的動機」の3タイプに分かれています。分散分析によって、属性との関連も検討されています(省略)。

回答投稿動機
 これについても、因子分析を行っています。その結果は、次のようになっています。
Q&Aコミュニティ回答動機の因子分析
                       (出典:三浦・川浦,p.240)

 結果、「援助動機」「互酬的動機」「社会的動機」「報酬的動機」の4タイプが得られています。全体として多かったのは、「援助的動機」でした。

考 察
 最後の「考察」部分から、いくつか引用させていただきたいと思います。

・投稿数に基づく分析では、投稿された質問に対して何らかの回答がなされ、さらに多くの場合、それは複数寄せられていた。回答投稿の主な動機として「援助的動機」が、参加スタイルを問わず、共通に挙げられていた。これらの結果は、知恵袋というQ&Aコミュニティでは、積極的かつ協力的な対人コミュニケーションが展開されているようすを示している。
・全体としてこのような傾向が見られる一方で、対人コミュニケーションへの欲求については必ずしも強くない。コミュニティ参加者の多くは、コミュニティの一参加者、特に質問者-回答者ダイアドという関係の中で情報交換や情緒的サポートの授受を求めはしても、それを契機に個別的な対人関係には発展させようという欲求はあまり強くはない。ひいては、このことがコミュニティ内での攻撃行動や対人葛藤の発生頻度を減じさせ、一定の秩序あるコミュニティを可能にしているのである。
・参加者の相互援助的な動機に基づく質問者-回答者ダイアドでの相互作用は、結果としてコミュニティ全体の雰囲気を良好にし、コミュニティ全体、そこで展開されるコミュニケーションに対する高い信頼を生み出している。


結論として、本論文を通して、「多くの人が純粋な善意でコミュニティに参加しているようすが示されたことは、インターネット社会にポジティブな世界観を適用しうる余地が存在することを証明するものといえよう」と締めくくっています。

 何か、緻密な分析を通して希望の持てる結論を導いており、希望のもてる論文と拝察しました。

 なお、詳しい内容については、参考文献をごらんください。ネット上にpdfが提供されています。これも、知識共有のあらわれで好感がもてます。

参考文献:
三浦麻子・川浦康至「人はなぜ知識共有コミュニティに参加するのか「質問行動と回答行動の分析」『社会心理学研究』第23巻第3号
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 「知識共有コミュニティ」(Q&A型)の威力がどの程度なのか、果たして信頼ある回答が得られるのか?それを評価するために、代表的なサイトで実験してみました。

 知りたい言葉の意味は、「サライ」です。先日、Yahoo!知恵袋で『小さい宿』という意味だと知りましたが、それだけでは、「知識」とはいえません。

 代表的なQ&A型の知識共有コミュニティには、「Yahoo!知恵袋」「教えて!Goo」「人力検索はてな」などがあります。この3つで、とりあえず「サライ」という言葉を検索にかけてみました。

Yahoo!知恵袋

 全部で10個の関連質問が出てきました。それぞれに、回答が載っています。

「サライ」ってなんですか? 24時間テレビで必ず歌われるサライってなんですか...

ベストアンサーは、次の通りです。

サライとはペルシャ語で「小さな宿」です。

作詞:谷村新司
作曲:弾 厚作(作曲者の弾厚作さんは、加山雄三さんの音楽家としてのペンネームです。)

今から15年前に24時間テレビの番組放送中に製作されたテーマソングです。
実はこのサライという曲は一般の方から詩を募集してそれをつなぎあわせ、歌詞を完成させて、
それにメロディをつけて成り立っているものなのです。
その当時、曲作りに携わったのが谷村氏、加山氏でした。

 これで最小限の知識は得られました。回答日時は2007年ですから、「サライ」は、1992年に、24時間テレビの番組放送中、一般からの詩を募って、それをつなぎあわせた曲の名前ということがわかります。語源は、ペルシャ語で「小さな宿」。

 それから1年後の同じような質問:
サライってどういう意味ですか?サライの空って何ですか?

これに対するベストアンサーは、

ペルシャ語でサライが「オアシス」の意味だというウソが流布していますが、ペルシャ語の sara'i に「オアシス」の意味も「故郷」の意味もありません。ペルシャ語でオアシスは vahe ワーヘ といいます。

とくにWikipedia日本語版はひどく、sarai を salai と、RとLを間違って書いています。

ペルシャ語の sara'i サラーイ は「家、旅館、役所」の意味で、比喩的に「世間、世界」の意味にもなります。
基本形は sara サラー で、イ はペルシャ語の不定語尾。

ペルシャ語 sara'i は、トルコ語を初めとするチュルク系(トルコ系)諸言語に入って、ウイグル語やウズベク語やカザフ語で sarai は「宮殿」の意味になりました。ヒンディー語やウルドゥー語などインド系諸言語にも入って、意味は「宮殿、館、家」です。
 これで、「サライ」の語源がさらに詳しく説明されています。「オアシス」という流布されている意味は間違い、ウィキペディア日本語版はsaraiをsalaiと間違えている、sara'iは「家、旅館、役所」の意味、ウィグル語などでは「宮殿」の意味になる、といった知識が披露されています。

教えてgoo

 『サライ』ってどういう意味?  

今更なのですが・・・
24時間テレビの主題歌、『サライ』って、どう言う意味なんでしょうか??


という設問に対する回答は、
『サライ』とは、ペルシャ語で『宿』、歌の中では『ふるさと』、『心のオアシス』といった意味が込められているとの事です…。

といった程度です。明らかに、Yahoo!知恵袋の方が詳しいようです。

人力検索はてな
 こちらで、「サライ」を入力して検索してみると、1件もヒットしませんでした。これでは、役に立ちませんね。

 Q&A型知識共有コミュニティのNo.1は、Yahoo!知恵袋といえるでしょう。

 しかし、Yahoo!知恵袋の答えで、ウィキペディアのSalaiの綴りが間違っている、といった「ウソ」情報は、本当なのでしょうか?

ウィキペディア
ウィキペディア日本語版で『サライ』を検索してみると、かなりの量の解説文が載っていました。綴りに関しては、
  • サラー(ペルシア語: سراUNGEGN式: Srā)、サラーイ(ペルシア語: سرای‎ Srāy; Srāi) - ペルシア語で家(または宿)の意味。家というペルシア語は、さらに「خانه」(ハーネ Khānh; Hāne)という言葉も出始めている。「خانهٔ کعبه」(ハーネイェ・カアバ Hāneye Kaabah)は、カアバ神殿
  • となっており、Salaiという綴りはない、というかたぶんYahoo!知恵袋を受けて修正されているようです(2010年12月20日閲覧)。Salai はレオナルド・ダヴィンチの弟子の通称だとしています。

     楽曲の「サライ」については、ウィキペディアでは、さらに詳細な解説が載っています(目次付き)。ここに抄録しておきます。
    楽曲誕生の経緯
    1992年の第15回記念として、加山雄三(筆名である弾厚作名義)がギターで作曲し、全国の視聴者から寄せられた愛のメッセージを基に谷村新司が代表作詞としてとりまとめ、24時間以内にそれを一本の歌として制作しようという試みが行われた。
    テーマ
    日本テレビによると、曲のテーマは「心のふるさと」であり、「サライ」という曲名はペルシア語سرای」(サラーイ、UNGEGN式: Srāy; Srāi)から来ていて、直訳は「宿(または家)」。さらに日本テレビによると、この曲には「砂漠の中のオアシス[A 1]という意味も込められている。「宿(または家)」や「砂漠の中のオアシス」が、曲のテーマ「心のふるさと」に近いから『サライ』という曲名になったのである、と日本テレビは説明している。
     「心のふるさと」「砂漠の中のオアシス」という意味が、この歌に込められている、という解釈は、24時間テレビ制作にあたった日本テレビによるもののようです。

    NTVのHPで、「サライ」を検索してみると、2008年8月29日の「気になるコトバ」でサライが次のように説明されていることがわかりました。

    あすから始まる24時間テレビ。
    番組で、
      必ず歌われるのがサライです。

    この曲名、
    実はペルシャ語で
    直訳すると
      「宿」という意味なのですが、
    砂漠の中の
       オアシスという意味もあり、
    「心のふるさと」という
       曲のテーマに近いことから
      こう名付けられた
    ということです。


    どうやら、NTVの勘違いがもとになっているようです。まあ、誤訳にしても、この歌のテーマが「心のふるさと」「オアシス」ということが確認できて、よかったです。

    いずれにしても、コトバの正確な意味を調べる場合には、複数のサイトに当たって検証する必要があるようです。最終的には、図書館などで、もっとも信頼できる情報源(語学事典など)にあたることが必要だということですね!
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     ソーシャルメディアという言葉は、すっかり定着した感があります。ただ、一義的な定義が難しいかもしれません。CGMということばも、マーケティングの領域では、ふつうに使われています。「消費者発信型メディア」ですね。

     これとは別に「知識共有コミュニティ」という言葉は、主に社会心理学者が使っているようです。折田明子さんによると、「知識共有コミュニティ」は、次の表のように分類されています。
     知識共有コミュニティの分類
      出典:折田明子「知識共有コミュニティ」(三浦他, 2009)
     

     ほとんどソーシャルメディアと変わらないですが、「コンテンツ提供型」「コミュニケーション型」「コラボレーション型」という3類型は、わかりやすい整理かと思います。とくに「コミュニケーション型」の中に、「知識共有サイト」が含まれていて、これは「狭義の知識共有コミュニティ」といえるでしょう。

     いわゆる「Q&A」型のサイトが、狭い意味での「知識共有コミュニティ」になるでしょう。Yahoo!知恵袋がその代表例です。Q&A型の共有サイトの利用とコンテンツについては、次回、具体的な研究例をご紹介したいと思います。

    参考文献:
    三浦麻子・森尾博昭・川浦康至編『インターネット心理学のフロンティア』(誠信書房)2009年
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     ソーシャルメディアの利用実態に関する調査データの追加です。これは、平成22年度『情報通信白書』に掲載されているデータです。


    ソーシャルメディアの利用実態(情報通信白書)


     これによると、ソーシャルメディアの中でもっともよく使われているのは、「ブログ」(77.3%)、第二位は「動画共有サイト」と「掲示板」となっています。SNSが第4位に入っています。性別では、男性よりも女性の方が利用率が高く、年齢別では、若年層ほど、動画共有サイト、SNS、ソーシャルゲームの利用率が高い、という結果が得られています。

     ほとんど毎日利用するソーシャルメディアで多いのは、SNSが第一位、ブログが第2位、ミニブログが第3位となっています(下の図)。

    ほとんど毎日利用する

    ほぼ納得のいく結果ですね。次回は、一番人気の「ブログ」の利用実態について、少し詳しくご紹介します。

    ※本調査の概要:
    調査対象:インターネット利用者のうち、ソーシャルメディアを使っている1600名。性別・年齢別で割り当て。
    ※ソーシャルメディアについての、より詳細な調査結果は、『平成22年度情報通信白書』WEB版をごらんください。
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     1年以上前の調査データのご紹介です。「クロスメディア研究会」の実施したインターネット調査によると、YouTubeなどの動画共有サイトを見ている人の「利用と満足」の実態は、次のようになっています(2009年8月実施)。
    動画共有サイトの効用1

     動画共有サイトの効用としては、「楽しいと感じる」「時間つぶしになる」「気晴らしになる」の3つが大きいようです。因子分析(主因子法、バリマックス回転)にかけると、2つの因子が抽出されました。

     第1因子は、「社会のいろいろな問題に対処するうえで助けになる」「世の中の意見を知るのに参考になる」など教育的、実用的な項目が高いのに対し、第2因子は、「くつろいだり、リラックスできる」「楽しいと感じる」など娯楽的な機能が強くなっています。

     年代別に比較してみると、娯楽的な効用を感じているのは、年配層に多く、教育・実用的に利用しているのは若い年齢層に多いという対照的な傾向がみられます。言い換えると、年配層は、従来のテレビと同じような娯楽媒体として「受動的」に動画共有サイトを利用しているのに対し、若い人々は、もっと能動的に使う傾向がみられるようです。

    ※グラフを拡大するには、画像をクリックしてください。
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     昨日の記事でも紹介したNHK調査では、「放送文化研究所」だけのことはあり、「テレビとツイッター」の関係にもふれています。今年3月、NHKで「放送記念日」特集『激震マスメディア』の中でも触れていましたが、最近では、テレビを見ながらツイッターに書き込むという新しい情報行動をとる若者が増えているようです。下の図は、「テレビを見ながら、その番組についてツイッターで書き込みをする」人の割合を示しています。64%の人が、こうした新しいタイプの情報行動をしていることがわかります。
    テレビを見ながらのツイッター書き込み率
      出典:三浦・小林「テレビの見方が変わる」(『放送研究と調査』2010年8月号)

     「ながら」で書き込みをする番組をみると、「バラエティ番組」(54%)がトップで、「ニュース」(45%)が第二位。第三位は「スポーツ中継」(35%)でした。いずれも、リアルタイム性の高い番組で、納得がいきます。番組中に「つっこみを入れる」(54%)人が多いようです。

     「リアルタイム」で「今、何が起きているのか」を知る手段(メディア)をみると、下の図のように、「ツイッター」(68%)がテレビ(69%)に並ぶほどの勢いを見せています。

    リアルタイム情報の入手
     
    「テレビを見ながらツイッターを利用して感じること」 のトップは、「みんなでテレビを見ているような一体感を感じた」(46%)とのことです。まさに、「ネオ茶の間」という、新しいメディア空間の誕生ですね。テレビ局側は、こうした視聴傾向に対応して、生番組を増やすのではないでしょうか?

    ※ 調査対象は「15~49歳のツイッターユーザーで、1日に1回以上書き込みする人」であることにご注意ください。


    参考文献:
    三浦基・小林憲一「テレビの見方が変わる~ツイッターの利用動向に関する調査」『放送研究と調査』2010年8月号
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     ソーシャルメディアの定義は、一義的ではなく、いろんなSocial的側面を含むWebサービスです。英語版サイトでみると、次のような事例を総合的に含む、包括的な用語のようです。

  • Social media is media designed to be disseminated through social interaction, created using highly accessible and scalable publishing techniques. ...
     
  • media that is created to be shared freely
     
  • Social media are primarily Internet- and mobile-based tools for sharing and discussing information among human beings.[1] The term most often refers to activities that integrate technology, telecommunications and social interaction, and the construction of words, pictures, videos and audio. ...
     
  • Social media are works of user-created video, audio, text or multimedia that are published and shared in a social environment, such as a blog, wiki or video hosting site.
  • Any website or web service that utilizes a 'social' or 'Web 2.0' philosophy. This includes blogs, social networks, social news, wikis, etc.
  •  
  • Software tools that allow groups to generate content and engage in peer-to-peer conversations and exchange of content (examples are YouTube, Flickr, Facebook, MySpace etc)
     
  • The term social media describes media that is posed by the user and can take many different forms. Some types of social media are forums, message boards, blogs, wikis and podcasts. Social media applications include Google, Facebook and YouTube.

    ・Social media is any form of online publication or presence that allows end users to engage in multi-directional conversations in or around the content on the website. 

  • A million different definitions from a million different people. But over at Duct Tape Marketing they say “[s]ocial media is the use of technology combined with social interaction to create or co-create value.”
     
  • A category of sites that is based on user participation and user-generated content. They include social networking sites like LinkedIn or Facebook, social bookmarking sites like Del.icio.us, social news sites like Digg or Reddit, and other sites that are centered on user interaction.
  •   Web2爆発するソーシャルメディア セカンドライフからモバゲータウンまで グーグルを超えるウェブの新潮流 [ソフトバンク新書].0以降のウェブアプリからなり、ユーザー参加型のオンラインメディア。具体的ツールをあげると、YouTube、wiki、facebook、ブログ、ツイッターなどを含みます。

     日本で「ソーシャルメディア」という言葉が喧伝されるようになったのは、2007年頃で、湯川さんの『爆発するソーシャルメディア』の出版のあたりでしょうか。その後、Web2.0ということばは、ほとんど聞かれなくなります。

    それでは、ソーシャルメディアの利用現況はどうなっているのでしょうか?最新の調査結果は、日経BPコンサルティングが2010年6月に実施した「ソーシャルメディア利用実態調査」(ネット調査)でしょうか。書籍版はべらぼうに高いので、入手できません。残念ながら国会図書館にも収蔵されていません。同社のニュースリリースで、その一端が開示されています。これと、他のいくつかの調査データによって、ソーシャルメディアの利用実態に迫ってみたいと思います。

     以下で引用する調査概要は、次のようになっています。

    【日経BPコンサルティング調査】
    調査時期:2010年6月
    調査方法:インターネットリサーチ
    調査対象:ソーシャルメディア・サービス利用経験者/18歳~69歳の男女
    回答者数:1200名

    富士通総研調査
    調査時期:2010年1月
    調査方法:インターネット調査
    調査対象:15歳~64歳(都道府県・性・年代の構成を国勢調査準拠で割付)
    回答者数:5451名

    【NHK放送文化研究所調査】
    調査時期:2010年3月
    調査方法:インターネット調査
    調査対象:15~49歳のツイッターユーザーで、1日に1回以上書き込みする人
    回答者数:1032人(性別、年齢で層化

    【JWIP調査】
    調査時期:2010年1月
    調査方法:調査員による訪問留置回収法
    調査対象:15~69歳の男女(性別、年齢層で割り当て)
    回答者数:525名

    (1)ソーシャルメディア利用率
     日経BP調査によると、利用率がもっとも高いソーシャルメディアは、YouTubeの62.3%、第二位は価格・comの53.9%、第三位はYahoo!知恵袋の44.7%、第四位はWikipediaの41.8%でした。

     JWIP調査によると、(週1回以上の利用率)、ブログを読む人が27.2%でもっとも高く、YouTubeなど動画投稿サイト利用率が18.7%で続いています。第三位は「SNSでゲームを楽しむ」13%、「動画配信サイトを見る」11%、などとなっています。ツイッターなどのミニブログに書き込む人は6.7%と低い率にとどまっています。プラットフォームでPCとケータイ別でみると、SNS利用率に関してはPC(9.5%)よりケータイ(11.6%)の方が高くなっています。一方、YouTubeなどの動画を見ている人は、ケータイ(5.3%)よりもPC(16%)の方が高い、という対照的な結果になっています。

    (2)ツイッターの利用実態
     富士通総研調査によると、ツイッターの認知率は70.2%と高いのですが、実際の利用率は8.2%と低い水準にとどまっています。利用率を年代別に見ると、10代が14.9%で一番高く、20代は12.4%で、30代以降は8%以下と低くなっていることがわかりました。

     ツイッター利用のメリットを聞いたところ、「リアルタイムに情報発信できる」(52.5%)、「ブログより更新が簡単」(52.2%)がもっとも高くなっています。10代・20代は、とくに「リアルタイム性」にメリットを感じています。これに対し、40代・50代は「新しいメディア」や「有名人の情報」に対する評価が高くなっています。

     NHK調査によると、ツイッターを利用する機器は、PCが96%と圧倒的に多く、携帯電話が55%でこれに続いています。いま話題のスマートフォンからの利用は17%にとどまっています。利用場所をみると、自宅が95%で圧倒的に多く、「通勤・通学途中の電車・バスの中」が49%とほぼ半数になっています。また、職場・学校が44%と三位に食い込んでいるのが興味深いところです。

     日経BP調査では、ソーシャルメディアのユーザー特性について、興味深い分析を行っています。 インターネット・ユーザーの“リアル”での意識や価値観によって、オンライン上の行為にどのような違いが生じるかを見るために因子分析を行ない、回答者を3つの心理クラスター:「アクティブリーダー型」「フォロワー型」「内向型」に分類しています。その結果、

    Twitterには「リーダー型の男性」、mixiには「リーダー型の女性」、ニコニコ動画には「内向型の男性」が相対的に多く集まる傾向があることがわかった。とくにmixiには、SNS のコミュニティを立ち上げたり、商品やサービスのレビューを投稿したりと活発に行動し、周囲への影響力が強い女性ユーザーが多く存在する。一方、YouTubeは、最も利用者数が多く、オンライン上で情報を発信する「参加者」と、見ているだけの「観察者」のバランスがよくとれているプラットフォームだ(日経BPコンサルティング,2010より)。

    という、納得の行くユーザー・プロフィールが析出されています。

    参考文献・資料:
    三浦基・小林憲一「テレビの見方が変わる~ツイッターの利用動向に関する調査」『放送研究と調査』2010年8月号
    日経BPコンサルティング:ニュースリリース、2010年7月29日
    富士通総研「ツイッター利用動向調査」2010年3月
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     ここ1,2年ほどの間に、Web2.0に代わって、social media(ソーシャルメディア)ということばが定着したようです。この和製英語っぽいことばは、誰が発案したのでしょうか?アメリカ人なら、Social Networkingというところでしょうけれど、勉強不足なので、調べがついていません。

     アメリカ版 ?"Social Media Revolution"というプロモーションビデオ(日本語訳つき)を見ると、、、


     しかし、この「革命」はいまに始まったことではなく、1995年を起点としていると考えた方がよさそうです。NHKオンラインの似たようなビデオクリップを見ると、それがよくわかります。これはNHKの視点ですが、、、


     NHKの視点ではなくても、1995年というのは、阪神淡路大震災でのインターネット発信活動、インターネット新聞の登場、不特定多数向けの個人ホームページの急増、など、エポックメイキング的な動きがあり、それが現在まで続く「革命」を引き起こしているように思われます。

     

     
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