小林啓倫著『災害とソーシャルメディア』
災害とソーシャルメディア

 今日は、この本を買って一読した。この本では、目新しいエピソードはあまり多くないが、冒頭「プロローグ」で紹介されている「副知事を動かしたソーシャルメディア」というエピソードは、私にとっては初見だったので、参考になった。宮城県気仙沼市の児童福祉施設での出来事。園長をつとめる女性は、東日本大震災発生直後、児童を連れて中央公民館に避難した。しかし、ここにも津波が押し寄せ、3階で孤立無援状態に。そこで、ケータイを使って、イギリスにいる息子宛に緊急状態を告げるメールを送った。息子は、ツイッターに、次のようなSOSのメッセージを投稿した。

【拡散願い】障害児童施設の園長である私の母が、その子どもたち10数人と一緒に、避難先の宮城県気仙沼市中央公民館の3階にまだ取り残されています。下階や外は津波で浸水し外は炎上、地上からは近寄れない模様。空から救助が可能であれば、子供達だけでも助けてあげられませんか。

 このSOSメッセージは何百回とRT(転送)され、東京都在住の男性を経由して、猪瀬副知事に伝わった。猪瀬副知事は3月11日深夜、このツィートに気づき、ただちに東京消防庁の担当部長を呼び、このメッセージを見せた。その結果、東京消防庁のヘリが現地に飛び、12 日午後までに中央公民館に避難していた子供たちや市民が無事救出されたという。  まさに、ソーシャルメディアの威力で、奇跡的な救出劇が起こった、ということだろうか。  ネットを検索してみると、『河北新報』のサイトで、このニュースが報道されていることがわかった。

 ・証言/450人が孤立(河北新報ニュース 2011年6月20日)

気仙沼中央公民館、津波浸水
津波で孤立した気仙沼市中央公民館(河北新報より) 

 『河北新報』記事によると、園長さんは、国内にいる家族にメールを送り、そのメールがロンドンにいる息子さんに転送された、となっている。つまり、SOSメッセージの伝達過程は、次のようだったらしい。

園長(中央公民館)→(メール)国内の家族→(転送)ロンドンの息子→ツイッター(拡散)→(ツイッター)東京都在住の男性→(ツイッター)東京都猪瀬副知事→(口頭)東京消防庁幹部→救助ヘリ派遣

 リアルタイム性の強いツイッター時代ならではの災害救助劇といえるだろう。

※参考:togetterのまとめサイト