このテーマに関する研究の白眉は、やはり川浦さんらの調査研究でしょう。『ウェブログ心理学』(NTT出版, 2005)で、詳しく紹介されています。ここでは、その一部を引用させていただきたいと思います(第3章 ウェブログの社会心理学 より)

調査概要:
対象:代表的なウェブ日記サイトの書き込み者1529名
有効回収:402票(男性305名、女性70名;30代までで全体の9割)
ウェブ日記を始めた動機として、いちばん多かったのは、「自分のことを表現するのによい方法だと思ったから」(48%)。次は「他の人が日記を書いているのを見て」「情報更新が手軽にできるから」の順。いまのブログでも似たり寄ったりの傾向がみられるのではないでしょうか?
次に、因子分析をした結果、(1)自己表現動機、(2)手段的動機、(3)同調的動機、の3グループに分かれました。
ウェブ日記の「効用」については、「自分に共感してくれる他者と出会い、親しくなれる」という回答がもっとも多く、「自分の問題や感情などを、整理し明確にすることができる」「不満や葛藤などを発散し、すっきりすることができる」がこれに次いでいます。このあたりは、「クロスメディア研究会」の因子分析結果とよく似ていますね。
川浦さんは、この回答項目を因子分析したところ、2つのグループに分かれました。
(1)自己に向かう効用(自分の問題や感情などを整理できる、自分の本当の気持ちがわかる、不安や緊張が解消する、など)
(2)他者との関係に向かう効用(自分に共感してくれる他者と出会い、親しくなれる、自分で気づかない欠点や特徴などを他者から指摘してもらえる、など)
この点について、川浦さんは、次のように述べています。
「分析的な観点からすると、ウェブ日記の効用が、自己に向かう側面と、他者ないし関係に向かう側面の2つに分離した点がおもしろい。つまり、二種類の効用は連動していないのである(前掲書77ページ)最後に、「あなたがホームページに日記を書いているのはなぜだと思いますか」という設問を5つに分けて質問しています。回答者数とともに、みると、次のようになっています。
(1)日々の生活の記録を自分のために覚書として残す(備忘録)(92人)さらに、日記のタイプと動機・効用との関係を調べるために正準判別分析を行った結果、次に示すような2つの軸が得られました。
(2)日々得た情報を他の人に提供できる(日誌)(91人)
(3)他の人に自分という人間を知ってもらえる(公開日記)(87人)
(4)自分で自分を理解することができる(狭義の日記)(54人)
(5)特に理由はない(理由なし)(50人)

(山下他,2005,p.86より引用)
川浦さんらは、従来の日記研究、自己開示研究の成果とデータ分析をもとに、下の図のような「ウェブ日記継続意向を支える心理的メカニズム」のモデルを提示しています。

この図式は、今後の同種研究にとっても非常に参考になります。その後のブログ研究でも支持されているようです(いずれ詳しく紹介する予定です)。
参考文献:
山下清美・川上善郎・川浦康至・三浦麻子 『ウェブログの心理学』(NTT出版)2005年
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