2010年は、「電子書籍元年」といわれ、アップル社のiPad、ソニーのリーダー、アマゾンのKindleなどの専用端末が発売され、出版社、広告代理店、書店などがデジタル・コンテンツの配信を開始した。電子書籍端末には、数千冊の本をデジタルで収納できるので、本棚を気軽に持ち歩ける、というメリットがある。リアルの本棚や本屋が不要になるかもしれない。製本、印刷のコストが省けるため、定価も紙の本より安く設定できる(実際、アマゾンで販売されて洋書や和書は、電子版の方が紙版よりも低く設定されている)。

 このように、「収納スペース」「印刷製本費の節約」という点からみれば、電子書籍は紙の本よりも競争上優位に立っている。また、iPad、リーダー、kindleなどの専用端末では、活字が見やすくなっており、紙のページをめくる感覚など、インターフェイス上も工夫がなされている。電子版では、ハイパーリンクを設定して、ウェブ上の情報源を参照することもできる。キーワード検索も簡単にできる。内容の改訂も、頻繁に行うことが可能である。本屋さんに出かけなくても、迅速に取り寄せることができる。

 これに対し、紙の本は、実物を手にとって見ることができる、紙の方が、ページをめくる感覚がすぐれ、一冊の本なら、携帯性も高く、一覧性においてもすぐれている。機能的に比較するならば、電子書籍は、紙の本よりもメリットが大きい。将来的には、紙の本が徐々に電子書籍に取って代わられるようになるだろう。現時点では、まだ専用の情報棚末の価格が高く、紙の本を直接脅かすまでには至っていないが、「紙」⇒「電子」への遷移が少しずつ進んでいくものと思われる。

 ちなみに、私自身については、Kindle Fire HDX 8.9の端末を持っていて、「ハウツー本」を中心に、電子書籍を購入する機会が大幅に増えた。値段の安さ、持ち運びの容易さ、書棚が満杯なので省スペースになること、自宅ですぐに入手できること、などにメリットを感じている。あとは、取扱い本数をもっと増やしてほしいと思う。

 電子書籍に関連のあるニュースが、けさの朝日新聞に報道されていた。
電子書籍にも「出版権」 著作権法改正へ

 電子書籍の海賊版対策や適正な流通のため、電子書籍に「出版権」を設ける著作権法改正案が4日、衆院文部科学委員会で全会一致で可決された。近く衆院本会議を通過し、参院審議を経て今国会で成立する見通しだ。来年1月1日に施行の予定。改正により、作家と契約した出版社は、海賊版発行の差し止めを訴えられるようになるほか、電子書籍販売サイトなどに配信を許諾できるようになる。
(『朝日新聞』2014年4月5日朝刊)

 これで、電子書籍の普及が促進されるかどうか、注目したいところだ。