一時期、「デジタルネイティブ」という言葉が流行ったことがある。生まれたときからデジタルメディアに囲まれ、インターネットやケータイを自由自在に操れる若者たちのことをいう。

   果たして、いまの若者たちはすべてデジタルネイティヴなのか?もちろん、そんなことはない。では、どんな若者たちがデジタルネイティブと言えるのか?

  来月に、大学生を対象にした調査を計画している。その中で、デジタルネイティブ度とSNS利用実態との関連を明らかにしたいと思っている。


デジタルネイティブとは?

 この概念の造語者であるマーク・プレンスキー(2001)によれば、デジタルネイティブとは、1980年代以降に生まれた若者をさし、
  • 複数のタスクを同時に処理できる
  • 情報を猛スピードで受けとることに慣れている
  • テキストよりも先にグラフィックを見るのを好む
  • ランダムに情報をアクセスすることを好む
  • インターネットにつながっているときが好き
  • 仕事よりもゲームを好む
 などの特徴を備えているという。また、ドン・タプスコット『デジタルネイティブが世界を変える』によれば、デジタルネイティブには次の8つの行動基準があるという。
  • 自由(ネット世代は何をする場合でも自由を好む)
  • カスタム化(ネット世代はカスタマイズ、パーソナライズを好む
  • 調査能力(ネット世代は情報の調査に長けている)
  • 誠実性(ネット世代は商品を購入したり、就職先を決めたりする際に、企業の誠実性とオープン性を求める)
  • コラボレーション(ネット世代はコラボレーションとリレーションの世代である)
  • エンターテインメント(ネット世代は、職場、学校、そして、社会生活において、娯楽を求めている)
  • スピード(ネット世代はスピードを求めている)
  • イノベーション(ネット世代はイノベーターである)
 一方、日本では、東大橋元研究室+電通がデジタルネイティブに関する調査研究を行っており、デジタルネイティブを生まれた西暦に即して「76世代」「86世代」「96世代」に分け、とくに96世代を「ネオデジタルネイティブ」と呼び、現代の若者の特徴を次のようにとらえている
  • モバイル機器を手足のように使いこなす
  • 朝から晩まで頭の中が動画漬け(しょっちゅう、ユーチューブなどを見ている)
  • 機械親和的傾向が強い(人と会って話しているときより、PCやケータイをいじっているときのほうが楽しい)
  • つながり志向(いつも友人や知人とつながっているという感覚が好きだ
  • 私生活中心主義(デイリー・ミー、ネットで自分に関心のあるニュースしか見ない)

  • クラウドコンピューティング脳(モバイル環境のネット上でアプリを自由自在に処理し、情報をすばやく収集・編集できる)
  • 「オンタイム」志向(ツイッターにより、リアルタイムの情報更新を楽しむ)
  • 気になることがあると、ケータイやスマホで詳細に情報検索する。つねにモバイル機器が一緒
  • 複数のSNSをうまく使いこなしている
 また、木村忠正は『デジタルネイティブの時代』の中で、デジタルネイティブの特性として、
  • 絶えず創り出される「空気」の存在((ケータイメールを)5分以内に送り返さなければいけない、といった暗黙のルール、すぐ返信がないと不安になる、など)
  • 親密さと「テンション」の共有(ツイッターによるコネクションという新しいタイプの人間関係の形成)
 などに注目している。

 これとは別に、NHK取材班が作成した「デジタルネイティブ度」チェックなどもある。



 

デジタルネイティブ度尺度の作成

以上の先行研究を参考にして、とりあえず、「デジタルネイティブ度」尺度をつくってみた。これは、9つの要素からなっている。
  •  IT革新性
  • マルチデバイス志向
  • スピード志向
  • クラウド脳
  • ネットへの高い信頼性
  • ネット繋がり志向
  • ネットでの情報発信志向
  • 情報カスタマイズ志向
  • 空気を読む傾向
 それぞれについて、2~3問の設問を作成しているところだ。調査実施の結果はまた改めてご報告することにしたい。仮説としては、こうした「デジタルネイティブ」の特性をもった若者は、実際には部分的にとどまり、その程度は個人によって異なるだろうということ、また、その度合いによって、SNSの利用行動も大きくことなる、ということを考えている。

 ちなみに、私は「デジタルシニア」であり、およそデジタルネイティブ世代とはかけ離れているものの、「デジタルネイティブ度」からすれば、ほぼ満点をつけられると思う。つまり、同世代においても、「デジタル親和度」は大きくことなるものと予想されるのである。