メディア・リサーチ

メディアとコンテンツをめぐる雑感と考察

カテゴリ: インターネット

 ピッパ・ノリス氏のdigital divideは2001年に出版されたが、その2年後〔2003年〕に出版された次の本も、デジタルデバイドをより深く理解する上で有用かと思われるので、少しばかりご紹介しておきたい。すでに刊行から8年経っているので、この本も今の状況からすると古くなっている点もあるが、「社会的包摂」(Social Inclusion)や「社会的排除」(Social Exclusion)をICTの文脈で議論した数少ない専門書として、参考になる部分は少なくないと思われる。日本では、「社会的包摂」は社会福祉の分野で盛んに用いられているように思われる。メディア論の領域では、これとやや近い概念として、「社会関係資本」(Social Capital)があり、こちらの方がインターネットとの関連でよく検討されているようだ。ICTと社会的包摂の関連では、欧州委員会(European Commission)がe-Inclusionという政策を推進しており、本書との関連が深いと思われる。

→ e-Inclusion (European Commission)

・Mark Warschauer, 2003, Technology and Social Inclusion: Rethinking the Digital Divide. MIT Press
『テクノロジーと社会的包摂:デジタルデバイドを再考する』

 著者は、もともとデジタルデバイドという概念を手がかりとして研究を始めたが、世界各地でフィールドワークを重ねるうちに、デジタルデバイドという概念のもつ問題点を感じるようになり、最終的に「ICTと社会的包摂」という研究テーマにたどりついた、と序章に書いている。

 デジタルデバイドに関する従来の議論(1990年代)では、デジタルデバイドを「ICTへのアクセス手段を持つ者と持たざる者との間の格差」として捉えており、持たざる者に対して、ICTへのアクセスを与えることが政策目標になっていたが、著者はフィールドワークを通じて、こうした視点に疑問を抱くようになったという。これを象徴するために、3つのエピソードが紹介されている。ここでは、そのうちの一つだけを翻訳しておきたい。

<スラム街の「壁の穴」>

 2000年、ニューデリー政府はIT企業と共同で、「壁の穴」実験(Hole-in-the-Wall experiment)と呼ばれるプロジェクトをスタートした。これは、スラム街に住む子どもたちにコンピュータへのアクセスを提供する試みだった。ニューデリーでもっとも貧しいスラム街に5台のコンピュータ・キオスクを設置した。コンピュータの本体はブースの内部にあったが、モニターは壁の穴から突き出しており、コンピュータのマウスの代わりに、特注のジョイスティックとボタン類が設置されていた。(2000年の時点では)キーボードは提供されていなかった。コンピュータはダイヤルアップ回線でインターネットに接続されていた。

 最小介入教育という理念に沿って、教師もインストラクターも提供されていなかった。その狙いは、子どもたちが大人の教師の指示を受けることなく、自分自身のペースでいつでも自由に学習ができるようにという点にあった。

 報告書によると、このサイトに群がった子どもたちは、自分たちだけでコンピュータの基本操作を教え合ったという。彼らは、クリックやドラッグの仕方、異なるメニューの選び方、コピペの仕方、ワードやペイントソフトの使い方、インターネットへのつなぎ方、背景の壁紙の変え方、などをすることができるようになった。このプロジェクトは、研究者や政府当局者から、インドや世界中の貧困な人々をコンピュータ時代に招き入れるものとして称賛された。

→(参考) CNNリポート: CNN on slumdog Millionaire's Real inspiration



 しかしながら、コンピュータ・キオスクを実際に訪問してみると、少し違う現実が見えてきた。インターネットはほとんど機能していなかったので、ほとんど使われていなかった。教育番組は利用できなかった。また、子どもたちが唯一理解できるヒンズー語のコンテンツも提供されていなかった。子どもたちはジョイスティックなどの操作を覚えたが、実際に費やす時間のほとんどはペイントソフトやコンピュータゲームだった。子どもたちを指導する教師やインストラクターもいなかった。近隣地区の両親たちは、このキオスクに複雑な感情を抱いていた。歓迎する住民もいたが、大部分の親たちは、キオスクが子どもたちにとって有害だと感じていた。ある母親は、「私の息子は学校での成績もよかったし、宿題も熱心にやっていたのに、今ではコンピュータゲームに夢中になり、学校の勉強がおろそかになっている」と(筆者に)語った。つまり、コンピュータを使った最小介入教育方式は、ほとんど教育効果がないことがわかったのである。

 ※訳者注:著者の現地調査は、2000年時点のものであり、その後「壁の穴」がどう改善されたかは、本書ではわからないが、上記のCNN特番の映像を見ると、コンピュータの仕組みやコンテンツ、ネット接続環境などもかなり改善されているようにも思われる。この社会実験に関する詳しい情報は、次のウェブサイトを参照されたい。

Hole-in-the-wall.com

 このようなICT導入プロジェクトは、ICTを通じて人々の生活を改善しようという真摯な動機で実施されたものだが、思いもかけない失敗に終わるケースが少なくない(日本でも、1980年代、政府のかけ声のもとで各地にニューメディアが導入されたが、ほとんどは失敗に終わったという先例がある)。その大部分は、ハードウェアとソフトウェアを導入することだけに関心が向き、ヒューマンな側面、ソーシャルな側面がおろそかにされた結果だといえる。

 ICTへのアクセスというのは、物理的な、デジタルな、人的な、社会的な資源からなる諸要因の複雑な配置の中に埋め込まれたものである。もし新しい情報技術への有意義なアクセスが提供されるとするならば、コンテンツと言語リテラシーと教育コミュニティと制度などが十分に考慮されなければならないだろう。

 そのためには、従来の「デジタルデバイド」という概念装置に代わって、「社会的包摂」という概念枠組みを採用することが必要だ、と著者は考える。

<社会的包摂>

 社会的包摂、社会的排除の概念は、もともとヨーロッパで開発されたものである。個人や家族や地域社会が社会的に全面的に参画し、自分たちの進路をコントロールできるようにすることを目指すもので、そのために、経済資源、雇用、教育、健康、住宅、余暇活動、文化、市民活動などの関連要因を考慮に入れる点に特徴がある。

 本書では、新しい情報通信技術を用いて新しい知識にアクセスし、採用し、創造する能力が現代における社会的包摂にとってきわめて重要だとの認識に立っている。具体的な研究設問としては、次のようなものがある。
・ICTへのアクセスはなぜ、どのように社会的包摂にとって重要なのか?
・ICTへのアクセスを持つとはどういう意味か?
・社会的包摂へのアクセスは多様な環境の中でどうすれば最大化できるか?
 
 研究の焦点をデジタルデバイドから社会的包摂にシフトさせるというのは、次の3つの前提条件にもとづいている:
(1)新しい情報経済とネットワーク社会が出現していること、
(2)ICTがこうした新しい経済と社会のすべての側面で決定的に重要な役割を果たしていること、
(3)ICTへのアクセスがこうした新しい社会経済において、社会的包摂性を規定する要因になっていること

 なお、本書で用いられるデータは、インド、ブラジル、エジプト、中国、アメリカでのフィールド調査にもとづいている。

 著者によれば、社会的包摂を促進するICTへのアクセスは、単に機器やネットワークを提供するだけでは達成できない。目標となるクライアントやコミュニティのもつ社会的、経済的、政治的なパワーを増大するには、さまざまな資源を動員することが必要である。その資源とは、「物理的資源」「デジタル資源」「人的資源」「社会的資源」の4つである。物理的資源とは、コンピュータやテレコミュニケーションへのアクセス(従来のデジタルデバイド論の対象)を意味する。デジタル資源とは、オンライン上で利用可能なデジタル素材(コンテンツや言語)のことをいう。人的資源とは、リテラシーや教育の提供を意味している。社会的資源とは、ICTへのアクセスをサポートするコミュニティ、制度、社会構造(いわゆる「社会関係資本」のこと)をさしている。これら4つの資源とICT利用との間には、反復的な関係がある。つまり、それぞれの資源はICTの有効活用に貢献すると同時に、それぞれの資源はICTの有効活用の成果ともなっているということである。したがって、これらの資源をうまく活用すれば、社会的発展と社会的包摂を促進するという好循環を生むことが期待される。

→以下、詳しくは原書をご参照ください。
 Technology and Social Inclusion: Rethinking the Digital divide.

 
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 Pippa Norris, 2001, Digital Divide: Civic engagement, Information Poverty, and the Internet Worldwide.

 
この本が出版されたのは、10年前のことだ。当時は、世界規模のデジタルデバイド研究書として大きな反響を呼んだ。その後、デジタルデバイドが解消に向かいつつあるために、あまり注目されなくなったが、この分野の最重要文献であることは確かだ。ノリス女史はハーバード大学教授で、専門は(国際)政治学だ。多くの重要文献を発表しており、数々の賞を受けている。→www.pippanorris.comを参照。

 分厚い本なので、読まないままでいたが、時間的余裕ができたので、じっくりと全編を読むことにしたい。この本は、インターネットが世界レベルで政治に及ぼす影響に関する、初の実証的研究である。

 本書では、デジタルデバイドを3つの次元からなるものとして捉えている:

(1)グローバル・デバイド:先進国と途上国との間にみられるデジタルデバイド
(2)ソーシャル・デバイド:国家の中での情報リッチと情報プアーとの間のデバイド
(3)デモクラティック・デバイド:公共的な世界でデジタル情報資源を活用し、政治参加に役立てている人と、そうでない人の間のデバイド

(1)グローバル・デバイド

〔原文〕 The UN Development Report argues that productivity gains from information technologies may widen the chasm betweeen the most affluent nations and those that lack the skills, resources, and infrastructure to invest in the information society.

・chasm  (地面、岩などの)幅の広く深い割れ目;深い淵。(意見・感情の)隔たり、食い違い

〔訳〕国連の開発レポートによると、情報技術から得られる生産性の向上は、もっとも豊かな国々と情報社会に投資するだけのスキル、資源、インフラを欠いた国々との間の隔たりを広げるかもしれないという。

〔原文〕 Yet at the same time digital networks have the potential to broaden and enhaunce access to information and communications for remote rural areas and poorer neighborhoods, to strengthen the process  of democratization under transitional regimes, and to ameliorate the endemic problems of poverty in the developing world.

・endemic 一地方独特の、風土性の

〔訳〕しかし同時に、デジタルネットワークは遠く離れた辺境地域や貧しい近隣地域では情報とコミュニケーションへのアクセスを広げ、促進することによって、発展途上の国家における民主化のプロセスを強化し、発展途上国における地域独特の貧困問題を改善するという潜在的可能性を秘めている。

(2)ソーシャル・デバイド

〔原文〕 Equally important , many official agencies have expressed concern about the development of a widening digital divide within societies.  Technological opportunities are often unevenly distributed, even in nations like Australia, the United States, and Sweden at the forefront of the imformation society.

・forefront  先頭、最前部;中心

〔訳〕同様に重要なこととして、多くの当局者たちは社会の「内部」でのデジタルデバイド拡大に対する懸念を表明している。オーストラリア、アメリカ、スウェーデンのような情報社会の先頭を走っている国においてさえ、技術的な機会はしばしば不均等に配分されている。

〔原文〕 The debate divides cyber-pessimists who emphasize deep-seated patterns of social stratification and the growth of an unskilled underclass in technological access, cyber-skeptics who believe that technologies  adapt to society, not vice versa, and cyber-optimists who hope that in affluent postindustrial societies, at least, the digital divide will eventually succumb to the combined forces of technological innovations, markets , and the state.

・succumb  屈服する、負ける

〔訳〕この議論において、サイバー悲観主義者、サイバー懐疑論者、サイバー楽観主義者の間で対立がみられる。サイバー悲観主義者はな深いところにある社会的階層化のパターンを強調し、技術的なアクセスにおける未熟練の下層階級の成長を強調する。サイバー懐疑論者は技術は社会に適応し、その逆ではないと主張する。そして、サイバー楽観主義者は、少なくとも豊かな脱産業社会においては、デジタルデバイドは最終的に技術革新とマーケットと国家に屈服するだろうという期待をもっている。

〔原文〕 Given substantial inequalities in the old masss media, it would be naive to expect that the Internet will magically transcend information poverty overnight. The more intriguing series of questions addressed by this book concern whether there are special barriers to digital technologies, such as their greater complexity or costs, and whether relative inequalities in Internet use will be similar to disparities in the penetration rates of older communication technologies.

・transcend (経験、理解の範囲を)超える;しのぐ
・intriguing 興味をそそる、おもしろい

〔訳〕旧来のマスメディアにおいても実質的な不平等が存続しているという現状を考えると、インターネットが情報の貧困を一夜にして魔術的に乗り越えるだろうと期待するのはナイーブすぎるだろう。本書で提示する、より興味をそそる一連の設問は、デジタル技術に対する特別の障害があるかどうか(例えば複雑さたコストの増大など)、そして、インターネットの利用における「相対的な」不平等が旧来のコミュニケーション技術の普及率格差と同様のものになるかどうか、に関するものである。

(3)デモクラティック・デバイド

〔原文〕 The last challenge, and perhaps the most intractable, concerns the potential impact of the digital world on the distribution of power and influence in political systems. There is growing awareness that a substantial democratic divide may still exist between those who do and do not use the multiple political resources available on the Internet for civic engagement.  

・intractable 御しにくい、手に負えない;処理し(扱い)にくい

〔訳〕最後のチャレンジ(そして、おそらくもっとも手に負えないこと)は、デジタル世界が政治システムにおける権力の分布や影響力に対してもつ潜在的インパクトに関する事柄である。実質的なデモクラティック・デバイドが依然として、市民の政治参加にとってインターネット上で利用可能な複数の政治的資源を利用する者と利用しない者の間で存続するかもしれない、という懸念が増大している。

<本書の概念的枠組み>

本書はインターネットと政治参加に関する包括的な概念枠組みに基づいて執筆されている。その枠組みは、ノリスによれば、次の図のようになっている。きわめて包括的なモデルであることがわかる。

           国家の文脈             政治制度             個人のレベル

Norris2001



〔原文〕 The national context, including the macrolevel technological, socioeconomic, and political environment, determines the diffusion of the Internet within each country. The instututional context of the virtual political system provides the structure of opportunities mediating between citizens and the state, including the use of digital information and communication technologies by governments and civic society. Finally, the individual or microlevel of resources and motivation determines who participates within the virtual political system. 

〔訳〕「国家」の文脈は、マクロレベルの技術的、社会経済的、政治的環境を含んでいるが、各国におけるインターネットの普及を規定している。バーチャルな政治システムという「制度的」文脈は、市民と国家の間を媒介すjる機会の構造を提供している。これには、政府や市民社会による情報通信技術の利用を含んでいる。最後に、資源や動機づけという「個人」あるいはミクロレベルは、誰がバーチャルな政治システムの中で参加するかを規定している。

※「個人」レベルの「資源」には、時間、お金、スキルなどが含まれる。また、「動機づけ」には政治への関心、自信、有効性感覚などが含まれる。

 以上、第1章の抄訳でした。これ以降、関心のある方は原書をお読みください。
 → Digital Divide 

※※ 本書が出版されたのは、2001年である。それから10年。インターネット世界の進歩は目を見張るばかりだ。とくにアメリカでは、大統領選挙でもオバマ氏がインターネット、とくにソーシャルメディアをフルに活用し、市民参加型の選挙を推進したことは、記憶に新しい。したがって、ノリス氏の本書に収録されているデータは、いまとなっては古くなっているものが多いことは否めない。ただし、本書で指摘されているようなグローバル・デバイドは、依然として大きなものがあり、参考にすべき点は少なくないと思われる。10年後のデジタルデバイドの現在はどのようなものか、それは読者であるわれわれ自身が検証すべきところだろう。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 これについては、すでに別の記事で指摘したが、もう一度繰り返しておきたい。

 ウィキペディアには、「デジタルネイティブ」の項目がある。この中で、「ガートナーのPeter Sondergaardが名付けた名称」(2011年11月1日閲覧時点)と記述されているが、これは間違っていると思われる。前掲書( The Digital Divide)の中でMarc Prenskyの雑誌論文が転載されており、Prensky氏が2001年に雑誌On the Horizon で、初めて「デジタルネイティブ」という言葉を使ったというのが正しいようだ。ウィキペディアのこの項目は、まだ「書きかけ」の状態にあり、いずれだれかが修正することを期待したい。ちなみに、英語版Wikipediaでは、語源について、Marc Prensky氏が2001年に初めて唱えた、と正しく記述されている。ウィキペディアの場合、日本語版は英語版に比べて正確度が劣る面があることを示す一例といえるかもしれない。

 正確にいうと、On the Horizonという教育関係の雑誌のVol.9 Isssue 5, issue6(2001年10月~12月)で2回にわたって掲載された、"Digital Natives, Digital Immigrants" という論文が、「デジタルネイティブ」という言葉の初出記事となる。次の文章が初出の箇所である:

   What should we call these "new" students of today? Some refer to them as the N- [for digital] - gen. But the most useful designation I have found for them is Digital Natives. Our students today are all "native speakers" of the digital language of computers, video games and the Internet.

〔訳〕このような今日の「新しい」学生たちをどう呼ぶべきなのだろうか?ある人は彼らを「N世代」と呼んでいる。しかし、私が見つけたもっとも有用な呼称は、「デジタルネイティブ」だ。今日の学生たちはすべて、コンピュータ、ビデオゲーム、インターネットのデジタル言語の「ネイティブスピーカー」なのだ。

 もう一つ、デジタルネイティブと対になって使われる「デジタルイミグラント」も、同じプレンスキー氏の造語だ。
 上記のパラグラフに続いて、次のように、定義している。

   So what does that make the rest of us ? Those of us who were not born into the digital world but have, at some later point in our lives, become fascinated by and adopted many of most aspects of the new technology are, and always will be compared to them, Digital immigrants.

〔訳〕それでは、その他のわれわれはなんと呼ぶべきか?デジタル世界に生まれてはこなかったが、われわれの人生のある時点で新しいテクノロジーの大部分に魅せられ、それらを採用するようになり、つねにデジタルネイティブと比較されるだろう人々、それは「デジタルイミグラント」である。

※なお、NHK「デジタルネイティブ取材班」編『デジタルネイティブ』(NHK出版, 2009)には、「デジタルネイティブという言葉を最初に使ったのは、アメリカの作家、マーク・プレンスキーだといわれている」と、正しく紹介されている。もっとも、上記の引用原文では、The most useful designation I have found for them is Didital Natives となっており、found ということばからすると、プレンスキー氏のオリジナルな造語かどうかは、必ずしもはっきりとはしない。すでに、一部の人々がこのことばを使っていたのを「見つけた」ということなのかもしれない。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 The Digital Divideという本には、ウィキペディアに関する論文もいくつか掲載されている。その中の一つを紹介しておきたい。Cathy Davisonの"We can't ignore the influence of digital technologies"というタイトルの章だ。例によって、わからない英単語の意味を入れながら、抄訳をつくってみよう。

・heresy 異教、異端、異説
・harrumph (おほんと)咳払いをする
〔原文〕 When I read the other day that the history department at Middlebury College had "banned Wikipedia," I immediately wrote to the college's president to express my concern that such a decision would lead to a national trend, one that would not be good for higher education. "Banning" has connnotations of evil or heresy. Is Wikipedia really that bad? (中略) Soon after the Middlebury story was reported, one of my colleagues harrumphed, "Thank goodness someone is maintaining standards!" I asked what he meant, and he said that Wikipedia was prone to error. So are encyclopedias, I countered.
〔訳〕先日、ミドルベリー大学の歴史学科がウィキペディアを「禁止した」という話を読んだとき、私はすぐに学長に手紙を書き、そのような決定は全国的なトレンドをつくり、それは高等教育にとってよいことではないだろう、という懸念を表明した。「禁止」ということばは悪いもの、異端といった意味合いを含んでいる。ウィキペディアは本当に悪いものなのか?〔中略〕 ミドルベリーのストーリーが報道されてから間もないころ、私の同僚の一人が、オッホンと咳払いしながら、「なんというすばらしいことか。誰かが規律を維持している!」と言った。私は彼に「それはどういう意味なの?」と聞いたところ、かれは「ウィキペディアには誤りが多い」と言った。「百科事典にもね」と私は言い返した。

・hone (技術などを)磨く
・knee-jerk (反応などが)反射的な;型にはまった
〔原文〕 The students at Middlebury have grown up honing those skills. Don't we want them to both mine the potential tools in their formal education and think critically about them That would be far more productived than a knee-jerk "Delete".
〔訳〕ミドルベリー大学の学生たちはそうしたスキル(デジタル技術を用いて情報を検索したり学習したりすること)を磨いて育ってきたのだ。われわれは公式教育の中で、そうしたツールのもつ潜在力を発掘すると同時にそれらについて批判的に考えさせたいとは思わないだろうか?

・hubbub がやがやいう音
・extrapolate (未知の事項を既知の事項から)推定する、外挿する
〔原文〕 I urge readers to take the hubbub around Middlebury's decision as an opportunity to engage students- and the country - in a substantive discussion of how we learn today, of how we make arguments from evidence, of how we extrapolate from discrete facts to theories and interpretations, and on what basis.
〔訳〕私は読者に対し、ミドルベリー大学の決定を一つのチャンスととらえて活発に議論することを勧めたい。それは、学生たち(そしてこの国)が、今日どのように学ぶべきか、どのように証拠にもとづいて議論すべきか、どのように個別的な事実から外挿して理論や解釈を構築すべきか、そしていかなる基礎にもとづいて議論すべきかについてである。

※関連ニュース記事:
(The New York Times:2007年2月21日)
A History Department Bans Citing Wikipedia as a Research Source

(朝日新聞記事:2007年2月23日)
ウィキペディア頼み、誤答続々 米大学が試験で引用禁止
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 いま読み進めているThe Digital Divideという本には、web2.0のオリジナル文書の他に、いくつかの関連論考が掲載されている。 その一つは、"Web 2.0: the second generation of the internet has arrived and it's worse than you think"  というもので、このタイトルから想像する限り、Web2.0批判のようだ。著者は、Andrew Keen氏。出典は、The Weekly Standard誌(2006年2月14日)。

 この論考の要旨を、原文と訳文を併記しながら紹介していきたい。

・nimble 動きの速い、すばやい、敏捷な
〔原文〕 We moderns are less nimble at resisting great seductions, particularly those utopian vision that promise grand political or cultural salvation. (中略) Here in Silicon Valley, this seduction has announced itself to the world as the "Web2.0" movement. 
〔訳〕われわれ現代人は、大きな誘惑に抵抗するのに、(古代の人々ほど)敏捷ではない。とくに、政治的、文化的な壮大な救済を約束するユートピア的ビジョンに対しては。(中略) ここシリコンバレーでは、この誘惑は「Web2.0」運動として世界に自ら宣言している。

・opinionated 自説を固執する
〔原文〕 This Web2.0 dream is Socrates' nightmare: technology that arms every citizen with the means to be an opinionated artist or writer.
〔訳〕このWeb2.0の夢はソクラテスの悪夢だ。すべての市民に自説を固執する芸術家や作家になるための手段を装備する技術なのだから。

・eschatology 終末論
〔原文〕 This outlook is typical of the Web2.0 movement, which fuses '60s radicalism with the utopian eschatology of digital technology. The ideological outcome may be trouble for all of us.
〔訳〕この見通し(ユーザー生成的なオンラインコンテンツが約束の地だという考え)は、Web2.0運動にとって典型的なものだ。それは60年代のラディカリズムとデジタル技術のユートピア的終末論を融合したものだ。

・geek コンピュータやインターネット技術に極端にのめり込む人々
〔原文〕 The movement bridges countercultural radicals of the '60s such as Steve Jobs with contemporary geek culture of Google's Larry Page.
〔訳〕こうした運動はスティーブ・ジョブズのような60年代のカウンターカルチャーの過激派とグーグルのラリー・ペイジを結びつけている。

・exuberance 豊富
〔原文〕 We know what happened first time around, in the dot-com boom of the '90s. At first there was irrational exuberance. Then the dot-com bubble popped; some people lost a lot of money and a lot of people lost some money. But nothing really changed. Big media remained big media and almost everything else - with the exception of Amazon.com and eBay - withered away.
〔訳〕われわれは90年代のドットコムブームの最初期に何が起こったかを知っている。最初の頃は、豊穣さがあった。それから、ドットコムバブルがはじけた。なにがしかの人々は多額の金を失い、多くの人はなにがしかの金を失った。しかし、実際にはなにも変わらなかった。ビッグメディアはビッグメディアのままでとどまり、その他のほとんは、アマゾンやeBayを除いては衰退してしまった。

・dinosaur 恐竜
・annihilation 絶滅
〔原文〕This time, however, the consequences of the digital media revolution are much more profound. Apple and Google and craiglist really are revolutionizing our cultural habirts. Traditional "elitist" media is being destroyed by digital technologies. Network television, the modern equivalent of the dinosaur, is being shaken by TiVo's overnight annnihilation of the thirty-second commercial. The iPod is undermining the multi-billion-dollar music industry.
〔訳〕しかしながら、今回は、デジタルメディア革命の影響ははるかに広範囲に及んでいる。アップルやグーグルやクレイグリストは実際にわれわれの文化的習慣を革命的に変化させている。伝統的な「エリート」メディアはデジタル技術によって破壊されている、恐竜の現代版であるネットワークTVは、デジタルビデオレコーダーが30秒のコマーシャルを一晩で絶滅させることによって大きく揺らいでいる。iPodは数十億ドルの音楽産業を根底から覆している。

・drain 排水する;〔飲み干して〕空にする
〔原文〕 Meanwhile, digital piracy, enabled by Silicon Valley hardware adn justified by Silicon Valley intellectual property communists such as Larry Lessig, is draining revenue from established artists, movie studios, newspapers, record labels, and songwriters.
〔訳〕その一方で、(シリコンバレーのハードウェアによって可能にされ、ラリー・レッシグのようなシリコンバレーの知的財産共産主義者によって正当化されている)デジタル海賊行為は、既存のアーティスト、映画スタジオ、新聞社、レコードレイベル、ソングライターから収入を枯渇させている。

・amnesia 記憶喪失
〔原文〕One of the unintended consequences of the Web2.0 movement may well be that we fall, collectively, into the amnesia that Kafka describes. Without an elite mainstream media, we will lose our memory for things learned, read, experienced, or heard.
〔訳〕Web2.0運動の意図せざる結果は、われわれが集合的にカフカの記述する記憶喪失に陥ってしまうということかもしれない。エリート主流メディアがなければ、われわれは学習され、読まれ、経験され、あるいは聴かれたものごとの記憶を失ってしまうことだろう。

(終わり)

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 Didital Divideと同様、最近忘れられているネット用語として、WEB2.0ということばがある。ソーシャルメディアにほとんど置き換えられた感がある。

 Web2.0という言葉が初めて登場したのは、いまから7年前の2004年のことだ。同年10月、アメリカの出版社オライリーメディア社のCEOであるテム・オライリー氏が、サンフランシスコで「Web2.0カンファレンス」という会議を開催したのが始まり。翌2005年9月30日、オライリー氏は、ウェブ上で「Web2.0とは何か?」という題名の論文を発表し、その全体像を明らかにした。その直後から、日本でもこの言葉が大きな話題になった。日経ITPROのウェブサイトをみると、10月21日付けの記事として、「web2.0を知っていますか?」という詳しい紹介記事が掲載されている。また、2006年2月には、Internet Watchでも、詳しく紹介されている。そこでは、web2.0 7つの原則という形で整理されている。

(1)ウェブがプラットフォームとして振る舞う → グーグルなど
(2)集合知を利用する → グーグル、アマゾン、はてなブックマーク、@コスメ、ウィキペディアなど
(3)データは次世代の「インテル・インサイド」 → グーグルマップなど
(4)ソフトウェア・リリースサイクルのおわり →ソフトは市販ではなく、自社サーバーにおく
(5)軽量なプログラミングモデル → 迅速に開発できる環境を構築
(6)単一デバイドのレベルをこえたソフトウェア → PCだけではなく、ケータイやスマホにも対応
(7)リッチなユーザー経験 → 待ち時間のない、ユーザー本意のサービス

 これらの原則は、ソーシャルメディア全盛の今日でも十分通用するものではないだろうか。

 では、Web2.0はその後、どのように展開しているのだろうか?まったく消えてしまった訳でもないようだ。オライリー氏自身が2009年に発表した "Web squared: web2.0 five years on"という論文で、その手がかりを探ってみたい。原論文を読もうと思ったら、その抄訳(解説つき)がウェブ上で公開されていたので、とりあえず、リンクをつけさせていただきたい。

 ・web squared (ウェブの2乗 その1)
 ・web squared (ウェブの2乗 その2)
 ・web squared (ウェブの2乗 その3)
 ・web squared (ウェブの2乗 その4)

 例によって、原論文の中に出現する難しい英単語を学びながら、読み進めていくことにしたい。

<序>
・bust  破裂、破産、破綻
 〔原文〕 The original Web2.0 Conference was designed to restore confidence in an industry that has lost its way after the dot-com bust.
 〔訳〕 もともとのweb2.0カンファレンスは、ドットコムバブル破綻のあと、業界が見失った自信を復活させるために企画されたものである。

・sentient 感覚をもった
 〔原文〕We're constantly asked about "Web3.0". Is it the semantic web? The sentient web? Is it the social web? The mobile web?
 〔訳〕われわれは絶えず「ウェブ3.0」について尋ねられてきた。それは意味論的なウェブか?感覚をもったウェブか?ソーシャルなウェブか?モバイルウェブか?、などと。

<集合知を再定義する:新たな入力センサー>
( redefining collective intelligence: new sensory input)

・lingua franca 共通語
 〔原文〕 Consider search - currently the lingua franca of the Web. (中略) Modern search engines now use complex algorithms and hundreds of different ranking criteria to produce their results.
 〔訳〕ウェブの共通語になっているサーチ(検索)を考えてみよう。(中略) 現在のサーチエンジンは、検索結果を作り出すために、複雑なアルゴリズムと数百ものランキング基準を用いている。

<ウェブはどのようにして学ぶのか:明示的 対 暗示的な意味>
(How the Web learns: Explicit vs. Implicit Meaning)

・inferential 推理的、推測的、推論的
〔原文〕But how does Web learn? What we see in practice is that meaning is learned "inferentially" from a body of data.
〔訳〕しかし、ウェブはどのようにして学ぶのか?実際に見るのは、意味がデータの中から「推論的」に学習するということである。

<ウェブと世界の出会い:「情報の影」と「事物のインターネット化」>
(Web Meets World: The "Information Shadow" and the "Internet of Things")

・breakthrough 大きな進歩、躍進、貴重な発見
〔原文〕The increasing richnessof both sensor data and machine learning will lead to new frontiers in creative expression and imaginative reconstruction of the world. (中略)All of these breakthroughs are reflections of the fact noted by Mike Kuniavsky of ThingM, that real world objects have "information shadows" in cyberspace. For instance, a book has information shadows on Amazon, on Google Book Search, on Goodreads, Shelfari, and librarything, on eBay and on BookMooch, on Twitter, and in a thousand blogs.
〔訳〕センサーデータや機械学習におけるリッチさの増大は、創造的な表現や世界のイマジネーションに満ちた再構築における新しいフロンティアへと導いてくれるだろう。(中略) これらすべての画期的進歩はThinfMのmike kuniavskyが述べているように、現実世界の事物がサイバースペースに「情報の影」をもっているという事実の反映である。例えば、一冊の本はアマゾン、グーグルブックサーチ、等々に情報の影をもっている。

・hodgepodge (主に米国で用いられる)ごた混ぜ
〔原文〕Many who talk about the Internet of Things assume that what will get us there is the combination of ultra-cheap REID and IP addresses for everyday objects. The assumption is that every object must have a unique identifier for the Internet Things to work. What the web 2.0 sensibility tells us is that we'll get to the Internet of Things via a hodgepodge of sensor data contributing, bottom-up, to machine-learning applications that gradually make more and more sense of the data that is handed to them.
〔訳〕事物のインターネット化について語る多くの人は、われわれをそこにつれていくのは、日常的な事物に対する超安いREIDタグとIPアドレスの結合だということを想定している。この前提は、事物のインターネット化がうまく働くためには、すべての事物はユニーク(独自)な識別子をもっていなければならないということである。(しかし)Web2.0のセンシビリティがわれわれに教えてくれるのは、我々はセンサーのごたまぜのデータを介して事物のインターネットに到達することができるということだ。こうしたセンサーデータは、ボトムアップ式に機械学習的なアプリケーションに貢献し、次第により多くのデータを意味づけるようになるだろう。

〔注〕(事物のインターネット化の例):
 スーパーマーケットの棚に並んでいるワインが事物のインターネット化に参加するには、RFIDタグは必要ない。それには、単にあなたがワインのラベルをケータイで写真に撮るだけでいいのだ。あとは、あなたのケータイ、イメージ認識装置、サーチ、感覚的ウェブ、GPSなどが(自動的に事物のインターネット化を)やってくれるわけだから。
 
・revelation (今までわからなかったことを)明らかにすること、暴露、発覚
〔原文〕As more and more of our world is sensor-enabled, there will be surprising revelations in how much meaning - and value - can be extracted from their data streams.
〔訳〕われわれの世界がますますセンサーで探知できるようになるにつれて、どれほど多くの意味(そして価値)がそうしたデータ・ストリームから抽出されるという新たな発見が生まれることだろう。

<リアルタイムの台頭:集合的精神>
(The Rise of Real Time: A Collective mind)

・cascade 小滝;階段状に連続する滝
〔原文〕Real-time search encourages real-time response. Retweeted "information cascades" spread breaking news acrosss Twitter in moments, making it the earliest source for many people to learn about what's just happened.
〔訳〕リアルタイムの検索はリアルタイムの反応を促進する。リツイートされた「情報の奔流」はツイッターを通じてあっという間にニュース速報を拡散させ、多くの人々によって、いま起きたばかりの出来事を知るための最初の情報源となる。

・infuse (人・心を)満たす
〔原文〕 Real time is not limited to social media or mobile. Walmart realized that a customer purchasing an item is a vote, and the cash register is a sensor counting that vote.  Real-time feedback loops drive inventory. WalMart may not be a Web2.0 company, but they are without doubt a Web Squared company: one whose operations are so infused with IT, so innately driven by data from their customers, that it provides them immense competitive advantage.
〔訳〕リアルタイムはソーシャルメディアやモバイルだけに限られているわけではない。ウォルマートは顧客の購買行動が「投票」であることに気づいた。そして、キャッシュレジスターが投票を数えるセンサーになっているのだ。リアルタイムのフィードバック・ループが品揃えに反映される。ウォルマートはWeb2.0の企業ではないかもしれないが、間違いなくウェブ2乗の企業である。そのオペレーションはITに満ちあふれている。本質的に顧客からのデータによって動いているので、彼らにとっては巨大な競争上の優位性を提供しているのだ。

<結論:大切なもの>
(In Conclusion: The Stuff That Matters)

・leverage (~に)影響力を行使する
〔原文〕 2009 marks a pivot point in the history of the Web. It's time to leverage the true power of the platform we've built. The Web is no longer an industry unto itself - the Web is now the world.
〔訳〕2009年はウェブの歴史の中でも画期的な位置を占める。それはわれわれが築いたプラットフォームの力を行使する時だ。ウェブはもはや一業界のものではない。ウェブは今や世界そのものなのだ。

〔終わり〕




    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 これもまた、The Digital Divideという本で抜粋が掲載されていた章のタイトルです。Grown Up Digital (pp.73-96)。すでに、2009年に邦訳が出ています(原書は2008年刊行)。詳しくはそちらを参照していただくとして、ここでは、英単語の勉強の一部として、抜粋を紹介しておきたいと思います。ちなみに、「8つの規範」とは、世界中の6000人のネット世代に対する調査をもとに、かれらのもつ規範(他の世代と異なる態度、行動上の特性)を抽出したものです。翻訳はまだ手元にないため、訳語が違っているかもしれません。

(1)自由(freedom)
(2)カスタマイズ性(customization)
(3)探索力(scrutiny)
(4)誠実さ(integrity)
(5)協働(collaboration)
(6)娯楽(entertainment)
(7)スピード(speed)
(8)イノベーション(innovation)

pester (人などを)悩ます、困らせる
 〔原文〕Since I was in the business of observing the impact of the Internet, I started pestering Niki with questions at the dinner table about what she was doing online.
 〔訳〕私がインターネットの影響を観察するビジネスを始めて以来、私はディナーテーブル上でニキ(タプスコットさんの娘)がオンラインで何をしているのかという質問で彼女を悩ませることになった。

(1) freedom(自由)

revel (・・・を)大いに楽しむ、耽る
 〔原文〕 They revel in the freedom. My son Alex, for instance, is thinking about getting an MBA or a law degree. But when I asked him about his immediate plans for a job, he put it this way:"A commitment of three years or more would make me hesitate...."
 〔訳〕彼ら(ネット世代)は自由を満喫している。例えば、私の息子アレックスは、MBAの資格や法学士の資格を取得することを考えている。しかし、就職についての直近の計画を訪ねると、こんな風に答える:「3年以上拘束されるのはいやだ、、、。僕は20代のうちは、自分探し、自己実現に専念したいんだ」

hedgehog ハリネズミ 
 〔原文〕Curious whether the African Pygmy hedgehog makes a good pet for a pre-teen? Google offers more than 25,000 links to "African Pygmy Hedgehog" to help the Net Gener decide.
 〔訳〕アフリカ・ピグミー・ハリネズミがプレティーンにとってよいペットかどうか、興味がありますか?グーグルはネット世代の決定を助けるために「アフリカ・ピグミー・ハリネズミ」へのリンクを25000以上張っているのだ。

(2) customization(カスタマイズ性)

quaint 古風な
relic 遺物
〔原文〕With YouTube, television networks run the risk of becoming quaint relics. The industry will still produce programming, but where and when the programming is watched will be up to the viewer.
〔訳〕ユーチューブのおかげで、テレビネットワークは古くさい遺物と化す危険を負っている。この業界は依然として番組を作り続けるだろうが、いつどこで番組が見られるかは、視聴者次第だ。

(3) scrutiny(探索力)

fisher フィッシング詐欺
scam 信用詐欺
〔原文〕Net Geners are the new scrutinizers. Given the large number of information sources on the Web, not to mention unreliable information - spam, phishers, inaccuracies, hoaxes, scams, and misrepresentations - today's youth have the ability to distinguish between fact and fiction.
〔訳〕ネット世代は新しい探索者だ。ウェブ上にある数多くの情報ソース(信頼できない情報-スパム、フィッシング詐欺、デマ、信用詐欺、誤った記述など-)からすると、今日の若者は事実と虚偽を見分ける能力を持っているといえる。
candor 公平無私、虚心坦懐、正直、率直
〔原文〕For anyone wanting to reach this age group, the best strategy is candor. They should provide Net geners with ample product information that is easy to access.
〔訳〕この年代グループに到達したいと思う者はだれでも、最良の戦略は「率直さ」だ。かれらはネット世代に対し、アクセスの容易な製品情報を豊富に提供すべきだ。

(4) integrity(誠実さ)

・give a damn 少しもかまわない
〔原文〕The stereotype that this generation doesn't give a damn is not supported by the facts. Net Geners care about integrity - being honest, consideerate, transparent, and abiding by their commitments.
この世代が(他者に対して)少しもかまわない、というステレオタイプは事実に反する。ネット世代は誠実さを気にかけている。つまり、正直であること、思慮深いこと、透明性をもつこと、約束を守ることなど、、

(5) collaboration (協働)

・harness (自然力を)利用する
〔原文〕 The new collaboration is not traditional teamwork at all. The difference today is that individual efforts can be harnessed on a large scale to achieve collective outcomes, like Wikipedia, the online encyclopedia written by 75,000 active volunteers.
〔訳〕新しいコラボレーションは伝統的なティームワークとは異なっている。現代における相違点は、個人の努力が集合的な成果を達成するために利用されるということである。オンライン百科事典のウィキペディアのように。

(6) entertainment (娯楽)

growl がみがみ不平を言う
goof off 怠ける、さぼる
〔原文〕Employers often growl when they see Net geners goofing off online at work. But I think that employers should cool it.
〔訳〕雇用者はしばしばネット世代が仕事中にオンラインで怠けている、と不平を言う。しかし、私は雇用者がもうすこし冷静になるべきだと思う。

(7) speed 〔スピード〕

24/7 つねに、いつでも。24 hours / 7 days a week の略語。twenty-four sevenと発音する。
〔原文〕 Having grown up digital, they expect speed - and not just in video games. They're used to instant responsee, 24/7.

〔訳〕デジタルに育った彼らは、スピードを要求する。それはビデオゲームだけではない。彼らはいつでもすぐにという即座の反応に慣れているのだ。

(8) innovation 〔イノベーション〕

toil 骨を折る、難渋しながら歩く
〔原文〕Net Geners don't want to toil in the same old bureaucracies as their parents. They've grown up in an era of constant innovation and change.
(訳)ネット世代は両親と同じような古くさい官僚的なやりかたで骨を折って進むことを望んではいない。彼らは絶え間なきイノベーションと変化の時代に育ったのだ。





    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 最近は、英書を読むとき、英和辞典はまったく引かなくなってしまった。その代わりに重宝しているのが、Weblio英和・和英辞典(オンライン版)だ。原典は研究社の新英和・和英辞典だそうだが、合計約25万語を収録しているというのだからすごい。発音のオーディオもついており、至極便利だ。もはや電子辞書も紙の辞書もいらない世の中になったと強く感じる今日この頃です。オンライン版を提供している出版社は大丈夫なんでしょうか?
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 最近では、デジタルデバイドという言葉を聞くこともほとんどなくなった。インターネットの世界では、言葉のはやりすたりも非常に速いと感じる。Web2.0もそうだった。

 アマゾンでDigital Divideというキーワードを入れてみたら、2011年に発売された The Digital Divideというタイトルの本が出てきたので、さっそく注文してみた。到着してみると、半分がっかり。1990年代から2000年代にかけての、デジタル社会論の主立ったものの抜粋のような内容で、最新のデジタルデバイド論ではなかったのだ。

 ただし、「デジタルネイティブ」(新世代)対「デジタルイミグラント」(旧世代)の間のデバイドが存在するという論考には、「なるほど」と思った。「デジタルネイティブ」初出の雑誌記事が掲載されていたので、これは引用先としても使えるかもという感じだ。ただ、このことばも、数年後には死語になってしまうかもしれないが、、、

※ウィキペディアには、「デジタルネイティブ」の項目がある。この中で、「ガートナーのPeter Sondergaardが名付けた名称」と記述されているが、これは間違っていると思われる。前掲書の中でmarc prenskyの雑誌論文が転載されており、Prensky氏が2001年に雑誌On the Horizon で、初めて「デジタルネイティブ」という言葉を使ったというのが正しいようだ。ウィキペディアのこの項目は、まだ「書きかけ」の状態にあり、いずれだれかが修正することを期待したい。ちなみに、英語版Wikipediaでは、語源について、Marc Prensky氏が2001年に初めて唱えた、と記述されている。ウィキペディアの場合、日本語版は英語版に比べて正確度が劣る面があることを示す一例といえるかもしれない。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 私にとって、今年は「クラウド元年」になりそう。昨年の年末は、どのクラウドを使ったらいいか、わかりませんでした。一端、mobileme(idisk)にフリートライアルしましたが、利用料金が1ヶ月900円もすることが嫌になって、解約しました。

 フリーソフトで、簡単操作で、インターネット上に各種データを共有できるサービスとして、dropboxに注目しています。

 使い方は非常に簡単です。PCとiPadの両方に、dropboxをインストールしておくと、まるでPC内でファイルコピーしたり、開けるように、快適なクラウド環境ができます。所用時間わずか30分でした。之は本当にお勧めのクラウドです。無料でも、2ギガの容量を使えます。iDiskの場合、20ギガでしたが、当分の間は、2ギガでも十分でしょう。

 クラウドについては、これからも随時研究を重ねるつもりです。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 オンライン上でPCとiPadのデータを共有する方法がもう一つありました。それは、Appleが提供するiWork.comというサイトです。iPadのPages(ワードに相当)、Keynote(パワポに相当)のファイルを作成したら、これをワード形式やパワポ形式でiWork.comに出力することができます。こういう形で、ファイル、データの共有化ができることがわかりました。iPadはなかなか奥が深いツールです。

 もう一つ、オンライン上でファイルを共有する方法があります。それは、Apple社が提供するiDiskです。ただ、年会費9800円をとられるのが痛いところ。60日間のフリートライアルを利用してみる手もあります。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 ついに、というかやっぱり必要だと感じて、WiMax方式のモバイルWiFiルーターを入手しました。ルーターそのものは、わずか1円。1年契約で月々の料金が使い放題で定額3880円です。しかも、1度に5台までPCとかiPad端末が利用可能。さっそく、iPadと自宅内PCを接続しました。WiMaxは、下りがなんと40Mbpsという超高速回線。いままでよりもはるかに快適にネットがつながるようになりました。動画サイトも、快適に利用できそうです。

 うーん、日本のモバイルネット環境は、やはり世界一ですね。

※地方にお住まいの方は、ご注意ください。このWiMaxは、首都圏と地方の一部しか、エリアをカバーしていません。新幹線の中などはつながらないでしょう。まだ試していませんが、、。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 ソーシャルメディアという言葉は、すっかり定着した感があります。ただ、一義的な定義が難しいかもしれません。CGMということばも、マーケティングの領域では、ふつうに使われています。「消費者発信型メディア」ですね。

 これとは別に「知識共有コミュニティ」という言葉は、主に社会心理学者が使っているようです。折田明子さんによると、「知識共有コミュニティ」は、次の表のように分類されています。
 知識共有コミュニティの分類
  出典:折田明子「知識共有コミュニティ」(三浦他, 2009)
 

 ほとんどソーシャルメディアと変わらないですが、「コンテンツ提供型」「コミュニケーション型」「コラボレーション型」という3類型は、わかりやすい整理かと思います。とくに「コミュニケーション型」の中に、「知識共有サイト」が含まれていて、これは「狭義の知識共有コミュニティ」といえるでしょう。

 いわゆる「Q&A」型のサイトが、狭い意味での「知識共有コミュニティ」になるでしょう。Yahoo!知恵袋がその代表例です。Q&A型の共有サイトの利用とコンテンツについては、次回、具体的な研究例をご紹介したいと思います。

参考文献:
三浦麻子・森尾博昭・川浦康至編『インターネット心理学のフロンティア』(誠信書房)2009年
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 「デジタルネイティブ」(Digital Natives)という言葉を最初につくったのは、アメリカの作家、マーク・プレンスキー(Marc Prensky)だといわれています。生まれたときから、ネット環境に親しんでいる若者世代のことをいいます。彼らの特徴は、

複数のタスクを同時に処理し、情報を猛烈なスピードで受け取ることに慣れている。テキストよりも先にグラフィックを見ることを好み、ランダムに情報にアクセスすることを好む。インターネットにつながっているときが最も機能する。リアルタイムに評価されることを好み、仕事よりもゲームを好む(三村・倉又『デジタルネイティブ』より引用)

なのだそうです。2006年頃でしょうか。世界的なITコンサルタント会社「ガートナー」がこのことばをキーに喧伝したのが、普及に弾みをつけたようです。

 参考文献の最初のものは、NHK特集番組制作のメイキング版といってもいいでしょう。番組は、2008年11月10日に放送されました。残念ながら、NHKオンデマンドにも収録されていませんので、中身をみることはできませんが、YouTubeに、画面の一部がアップされていましたので、紹介しておきます。

(つづく)
 

参考文献:
三村忠史・倉又俊夫・NHK「デジタルネイティブ」取材班『デジタルネイティブ:次代を変える若者たちの肖像』2009年
橋元良明他『ネオ・デジタルネイティブの誕生』2010年
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 最近話題になっているテーマとして、ウィキリークス問題があります。ウィキペディアとは何の関係もないウェブサイトです。ウィキペディアによると、「WikiLeaks(ウィキリークス)は、匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイトの一つ。創始者はジュリアン・アサンジ。」とあります。アサンジ氏は、婦女暴行のかどで、きのう逮捕されましたが、その後もウィキリークスからの公的文書流出が続いているようです。なんと1000ものミラーサイトがウェブ上で公開されているということですから、先日の「尖閣ビデオ流出」事件と同様に、情報流出をとめるすべはないでしょう。ウィキリークスは、現代史を大きく変える可能性を秘めています。現代史研究者は、この事態をどう受けとめるでしょうか?今後の行方に注目したいと思います。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ